諸県弁

諸県弁（もろかたべん）について

諸県弁は、九州南部で話される日本語の方言で、薩隅方言（鹿児島弁）の一種とされています。主に宮崎県の都城市、小林市、えびの市、北諸県郡、西諸県郡と、鹿児島県の曽於市の一部、志布志市の一部で使われています。宮崎県西諸地域で話されるものは、特に西諸弁と呼ばれることもあります。

使用地域

諸県弁が使われる地域は、旧日向国で薩摩藩だった地域とほぼ一致します。ただし、小林市の一部、須木地区では宮崎弁（豊日方言）の影響を受けています。また、東諸県郡では宮崎弁化が進んでいます。

宮崎県：都城市、小林市、えびの市、北諸県郡、西諸県郡
鹿児島県：曽於市の一部、志布志市の一部

語彙の特徴

諸県弁には、他の薩隅方言とは異なるいくつかの特徴的な語彙があります。

形容詞の強調：「ぬきもぬき（温かい）」「さみもさみ（寒い）」のように、形容詞を繰り返して強調する表現があります。
「よだき」の使用：宮崎弁を代表する言葉の一つである「よだき」（だるい、疲れた）が使われます。
形容詞の活用語尾：「よか（良い）」を除き、形容詞の終止形や連体形の活用語尾が「か」となることは少ないです。

語例

諸県弁には、独特な意味合いを持つ語彙が多く存在します。以下に代表的な例を挙げます。

「どげんか〜」：
「どうにか〜」という意味です。都城市出身の東国原英夫元宮崎県知事が選挙演説などで「どげんかせんないかん（どうにかしなければならない）」と発言したことで、2007年の流行語大賞を受賞しました。ただし、流行語大賞では「どげんかせんといかん」と誤った形で受賞しています。
宮崎県内の他の地域で使われる宮崎弁では、「どんげかせんといかん」となります。
「くいまらん」：
「あることをしなければならないのは分かっているが、他のことが優先されたり、その気になれなかったりして、なかなか手をつけられない」という意味です。「繰り参らず」が訛ったものとされています。これは諸県弁の中でも特に多用されますが、共通語に訳すのが難しい語彙の代表例です。

アクセント

諸県弁のアクセントは、他の薩隅方言（二型アクセント）とは異なり、地域によって大きく異なります。えびの市を除くほとんどの地域で一型アクセントまたは無アクセントとなっています。

尾高一型アクセント：都城市の西部、小林市の西部、曽於市の一部、志布志市の一部では、全ての語の最後を高く発音する尾高一型アクセントが特徴です。
無アクセント：都城市の東部、小林市の東部、北諸県郡、西諸県郡では、無アクセントとなっています。この特徴は宮崎弁と共通しています。
二型アクセント: えびの市では二型アクセントが使われています。

参考文献

飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一編『講座方言学 9 九州地方の方言』国書刊行会、1983年。
上村孝二「九州方言の概説」
岩本実「宮崎県の方言」
後藤和彦「鹿児島県の方言」

関連項目

薩隅方言
宮崎弁
諸県郡

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