諸陵式

『諸陵式』は、『延喜式』の巻第二十一に収録されており、朝廷が管理すべき山陵や諸墓に関する記述をまとめたものです。『延喜式』巻第二十一は、八省の一つである治部省とその下位組織である雅楽寮、玄蕃寮、そして諸陵寮について記しています。このうち、諸陵寮の項目に、山陵諸墓に関する詳細な規定、すなわち『諸陵式』が含まれています。

『諸陵式』では、まず瓊瓊杵尊、火火出見尊、鸕鶿草不葺合尊の三つの神代陵から始まり、天皇陵や三后陵、皇后以下の皇妃墓、そして外戚の墓など、合計で三十七陵と四十七墓が列記されています。各陵墓については、諡号、所在地、兆域の大きさ、四至、陵戸や守戸の数などが具体的に記されています。また、陵墓の遠近による区別や、荷前を奉らない陵墓なども区別されています。特に神代陵については、すべて日向国にあり、陵戸が存在しないことが明記されているのに対し、それ以外の陵墓については、郡名以下の詳細な所在地や陵戸の数が明示されており、両者の扱いの違いが際立っています。また、田邑陵（文徳天皇陵）の近くに設けられた神代三陵を祭るための兆域に関する記述からは、日向国にある神代三陵が実質的に諸陵寮の管理下から離れていたことが示唆されています。

陵墓の所在地名に関しては、新しいものは郷名まで、古いものは郡名までが記録されています。兆域の記述も同様に、古いものは東西南北の町数で、新しいものは境界や面積が示されています。特筆すべき点として、嵯峨天皇、淳和天皇、清和天皇の三代の天皇陵は、山陵を興さないという遺詔に基づき掲載されていません。しかし、贈天皇である草壁皇子、志貴皇子、早良親王の陵は記載されています。

三后陵については、太[[皇太后]]、贈太[[皇太后]]、皇太后、贈皇太后、皇后、贈皇后の墳墓が記されていますが、親王以下の皇族の人数と比較すると、その数が少ないことがわかります。また、奈良時代以前の皇后の墳墓は、陵ではなく墓列に加えられている点も注目に値します。臣下の外戚の墓については、奈良時代以降のものがほぼ全て記載されており、その他に不遇であった者や功臣の墓も含まれています。これら三十七陵と四十七墓は、いずれも諸陵寮によって管理されていました。

『諸陵式』の後半部分では、祭祀や管理の方法が規定されています。具体的には、荷前の幣物の員数や領幣の儀式、陵戸や守戸の定数、戸籍の管理、陵墓周辺の原野の焼除、年2回の陵墓巡検と兆域の修理などが詳細に定められています。これらの規定からは、古代における陵墓の祭祀と管理が非常に厳格に行われていたことが窺えます。

『諸陵式』は、古代の天皇陵や皇族の墓に関する貴重な情報を提供しており、当時の社会制度や葬送儀礼を研究する上で欠かせない資料となっています。

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