谷島正之
谷島 正之（たにしま まさゆき）は、1967年4月24日生まれの日本の映画プロデューサーです。現在の所属はアスミック・エース株式会社で、映像事業本部の映像事業部・副部長を務めています。
専修大学経済学部経済学科で学んだ谷島氏は、学生時代にマスメディア研究愛好会に所属し、8mmフィルムを使った自主映画製作や同人誌の制作に没頭しました。特に、全国の大学の映画研究会による学生映像連盟シネックの活動には積極的に参加し、1990年には第12代代表を務めるなど中心的な役割を担いました。この学生時代の活動を通じて、後の師となる映画プロデューサー・原正人と出会います。1990年9月から原氏が社長を務めるヘラルド・エース株式会社でアルバイトとして働き始め、翌1991年に入社しました。
ヘラルド・エースは当時、単館系アートシアターの草分けとして知られ、『ニューシネマ・パラダイス』のような作品を大ヒットさせていましたが、同時に日本映画の製作も重要な柱としていました。谷島氏は、実相寺昭雄監督の『歌麿・夢と知りせば』や黒澤明監督の『乱』に見られるような独自の視点や、それを映像として生み出すクリエイティビティに強い感銘を受け、映画製作の道に進むことを決意したと言います。
その後、ヘラルド・エースはエース・ピクチャーズ、アスミック・エース・エンタテインメントと組織形態を変え、現在のアスミック・エース（J:COM傘下）に至りますが、谷島氏は一貫して映画業界でキャリアを積み重ねてきました。
1991年にアスミック・エースに入社した谷島氏は、まず宣伝部に配属されました。キャリアの初期には、インドネシア映画『チュッ・ニャ・ディン』をはじめ、ニール・ジョーダン監督作『スターダスト』、アンジェイ・ワイダ監督作『コルチャック先生』、ジュネ＆キャロ監督作『デリカテッセン』、ピーター・グリーナウェイ監督作『プロスペローの本』といったヨーロッパ映画を中心に、恩地日出夫監督作『四万十川』や熊井啓監督作『ひかりごけ』などの日本映画も手がけるなど、洋邦問わず多様な作品の宣伝業務に従事しました。
宣伝プロデューサーとしては、1992年に『地獄の黙示録』のドキュメンタリー『ハート・オブ・ダークネス／コッポラの黙示録』で初めて全体的な宣伝プランニングを担当。1993年にはサンダンス映画祭に参加し、洋画買付けの経験も積みました。そこで買付けたフランス映画『カルネ』は、1994年の日本公開時にレイトショー映画として当時の興行記録を樹立するなど、宣伝プロデューサーとしての手腕を発揮しました。この時期には『レザボア・ドッグス』、『めぐり逢う朝』、『スワロウテイル』など、後に名作として語られる多くの作品の宣伝を手がけています。
2005年からは宣伝プロデューサーの業務と並行して製作にも携わるようになります。源孝志監督作『大停電の夜に』では、企画段階から参加し、アソシエート・プロデューサーとして企画、製作、宣伝を一貫して担当しました。2006年には正式に製作部へ異動し、製作アソシエイトチームを統括する立場として、様々な作品の企画に関与します。
製作者として、ユニークな国際共同製作も実現しました。日米加合作のホラーオムニバス『デス・ルーム』では共同プロデューサーを務め、ジョー・ダンテ、モンテ・ヘルマン、ショーン・Ｓ・カニンガムといったジャンル映画のベテラン監督に加え、ケン・ラッセルの遺作となったエピソードも含まれるなど、豪華な布陣で日本でのロケも行われました。また、写真家としても著名な蜷川実花監督の映画デビュー作『さくらん』（2007年）や、その後の『ヘルタースケルター』（2012年）では、製作と宣伝の両面から深く関与し、話題となりました。その他にも、小泉堯史監督作『明日への遺言』（プロデューサー・アシスタント）や犬童一心監督作『グーグーだって猫である』（共同プロデューサー）、東日本大震災後の福島を追ったドキュメンタリー『がんばっぺ、フラガール！～フクシマに生きる。彼女たちのいま～』（共同プロデューサー）など、幅広いジャンルの作品を手がけています。
プロデューサーとしての活動は、常に新しい表現や技術、メディアへの挑戦を伴います。2007年には、角川モバイルとの連携により、配信映画の先駆けとされる『きまぐれロボット』を企画・プロデュースし、AMDアワード優秀賞を受賞。これは星新一原作の実写化としても注目されました。2008年には、ベストセラー小説を映画化した『西の魔女が死んだ』で、長編映画の単独プロデュースを初めて担当しました。
特に先進的な取り組みとして挙げられるのが、デジタル3D映画への挑戦です。2009年にプロデュースした清水崇監督作『戦慄迷宮3D』は、日本を含むアジア圏初のデジタル3D実写長編映画として、『アバター』に先行して公開され大きな話題となりました。同作はヴェネチア国際映画祭の3D部門や特別招待作品として上映され、国際的な評価も得ています。また、同年には世界市場を強く意識し、全編英語で製作された塚本晋也監督作『鉄男 THE BULLET MAN』をプロデュース。サンディエゴのコミコンでの発表やヴェネチア国際映画祭コンペティション部門への出品など、海外の映画祭で多数の成果を収めました。2011年には清水崇監督との3D作品第二弾『ラビット・ホラー3D』を製作するなど、3D技術の探求を続けました。
劇場映画に加えて、テレビドラマや配信コンテンツなど、多様なメディアでの企画・プロデュースも積極的に行っています。2014年には連続テレビドラマ『アラサーちゃん 無修正』の企画を担当。同年、サンリオとコラボレーションした極彩色3Dミュージカル・ファンタジー映画『くるみ割り人形』では、既存のフッテージにデジタル技術を組み合わせるという革新的な手法で新たな映像世界を創造しました。2015年には園子温監督の『リアル鬼ごっこ』を手がけ、モントリオール・ファンタジア国際映画祭で作品賞を含む主要3部門を受賞。そのスピンオフとして、若手監督たちによる配信オリジナルドラマ『リアル鬼ごっこ ライジング』も企画・プロデュースしました。さらに、GYAO！初のオリジナル配信ドラマ『女子の事件は、大抵トイレで起こるのだ。』（白石和彌監督）では、配信版と劇場公開版を両方展開するなど、フォーマットの可能性を追求しています。
また、過去作品の価値を現代に引き上げる取り組みとして、4Kリマスター化のプロデュースも行っています。2015年にはフィルム撮影の『さくらん』や『博士の愛した数式』の4K版を、2016年にはテレビアニメシリーズ『ハチミツとクローバー』全話の4K版を製作し、ブルーレイ発売などを実現させました。2017年には、羽海野チカ原作、大友啓史監督の大型企画『3月のライオン』2部作を完成させ、共同配給で公開。その他にも、『愛のむきだし【最長版 ザ・テレビショー】』の企画プロデュース、YouTubeなど新たなプラットフォーム向けの映像コンテンツ企画にも関わるなど、常に時代の動きを捉えながら精力的に活動を続けています。
自身の豊富なプロデュース経験や映像技術に関する知見を、著作という形で発信していることも谷島氏の活動の特徴です。共著として出版された『3D世紀／驚異！立体映画の100年と映像新世紀』では、3D映像の歴史、技術、そして自身の担当である「製作」の側面から、特に『戦慄迷宮3D』の企画・製作の舞台裏や、体感映画の追求について詳細に記述しています。また、キネマ旬報ムック『デジタル時代の映像クリエイター』では、プロデューサー養成講座の内容などを基に、デジタル化が進む時代の映像制作やプロデュースについて執筆。『戦慄迷宮3D』や『鉄男 THE BULLET MAN』といった挑戦的な作品の企画・製作プロセスを具体的に解説し、クリエイターやプロデューサーを目指す人々へのサジェスチョンを提供しています。
このように、学生時代からの映像への情熱を原点に、宣伝、製作、そしてプロデュースとキャリアを広げながら、劇場映画から配信、テレビ、YouTubeに至るまで、多様なプラットフォームで常に新しい表現や技術を取り入れ、国際的な視野を持って作品を生み出し続ける谷島正之氏は、現代日本映画界において多大な貢献を果たしているプロデューサーと言えるでしょう。
映画の世界への歩み
専修大学経済学部経済学科で学んだ谷島氏は、学生時代にマスメディア研究愛好会に所属し、8mmフィルムを使った自主映画製作や同人誌の制作に没頭しました。特に、全国の大学の映画研究会による学生映像連盟シネックの活動には積極的に参加し、1990年には第12代代表を務めるなど中心的な役割を担いました。この学生時代の活動を通じて、後の師となる映画プロデューサー・原正人と出会います。1990年9月から原氏が社長を務めるヘラルド・エース株式会社でアルバイトとして働き始め、翌1991年に入社しました。
ヘラルド・エースは当時、単館系アートシアターの草分けとして知られ、『ニューシネマ・パラダイス』のような作品を大ヒットさせていましたが、同時に日本映画の製作も重要な柱としていました。谷島氏は、実相寺昭雄監督の『歌麿・夢と知りせば』や黒澤明監督の『乱』に見られるような独自の視点や、それを映像として生み出すクリエイティビティに強い感銘を受け、映画製作の道に進むことを決意したと言います。
その後、ヘラルド・エースはエース・ピクチャーズ、アスミック・エース・エンタテインメントと組織形態を変え、現在のアスミック・エース（J:COM傘下）に至りますが、谷島氏は一貫して映画業界でキャリアを積み重ねてきました。
宣伝・宣伝プロデューサーとしての経験
1991年にアスミック・エースに入社した谷島氏は、まず宣伝部に配属されました。キャリアの初期には、インドネシア映画『チュッ・ニャ・ディン』をはじめ、ニール・ジョーダン監督作『スターダスト』、アンジェイ・ワイダ監督作『コルチャック先生』、ジュネ＆キャロ監督作『デリカテッセン』、ピーター・グリーナウェイ監督作『プロスペローの本』といったヨーロッパ映画を中心に、恩地日出夫監督作『四万十川』や熊井啓監督作『ひかりごけ』などの日本映画も手がけるなど、洋邦問わず多様な作品の宣伝業務に従事しました。
宣伝プロデューサーとしては、1992年に『地獄の黙示録』のドキュメンタリー『ハート・オブ・ダークネス／コッポラの黙示録』で初めて全体的な宣伝プランニングを担当。1993年にはサンダンス映画祭に参加し、洋画買付けの経験も積みました。そこで買付けたフランス映画『カルネ』は、1994年の日本公開時にレイトショー映画として当時の興行記録を樹立するなど、宣伝プロデューサーとしての手腕を発揮しました。この時期には『レザボア・ドッグス』、『めぐり逢う朝』、『スワロウテイル』など、後に名作として語られる多くの作品の宣伝を手がけています。
製作業務への移行と多様な挑戦
2005年からは宣伝プロデューサーの業務と並行して製作にも携わるようになります。源孝志監督作『大停電の夜に』では、企画段階から参加し、アソシエート・プロデューサーとして企画、製作、宣伝を一貫して担当しました。2006年には正式に製作部へ異動し、製作アソシエイトチームを統括する立場として、様々な作品の企画に関与します。
製作者として、ユニークな国際共同製作も実現しました。日米加合作のホラーオムニバス『デス・ルーム』では共同プロデューサーを務め、ジョー・ダンテ、モンテ・ヘルマン、ショーン・Ｓ・カニンガムといったジャンル映画のベテラン監督に加え、ケン・ラッセルの遺作となったエピソードも含まれるなど、豪華な布陣で日本でのロケも行われました。また、写真家としても著名な蜷川実花監督の映画デビュー作『さくらん』（2007年）や、その後の『ヘルタースケルター』（2012年）では、製作と宣伝の両面から深く関与し、話題となりました。その他にも、小泉堯史監督作『明日への遺言』（プロデューサー・アシスタント）や犬童一心監督作『グーグーだって猫である』（共同プロデューサー）、東日本大震災後の福島を追ったドキュメンタリー『がんばっぺ、フラガール！～フクシマに生きる。彼女たちのいま～』（共同プロデューサー）など、幅広いジャンルの作品を手がけています。
先進的なプロデュース活動
プロデューサーとしての活動は、常に新しい表現や技術、メディアへの挑戦を伴います。2007年には、角川モバイルとの連携により、配信映画の先駆けとされる『きまぐれロボット』を企画・プロデュースし、AMDアワード優秀賞を受賞。これは星新一原作の実写化としても注目されました。2008年には、ベストセラー小説を映画化した『西の魔女が死んだ』で、長編映画の単独プロデュースを初めて担当しました。
特に先進的な取り組みとして挙げられるのが、デジタル3D映画への挑戦です。2009年にプロデュースした清水崇監督作『戦慄迷宮3D』は、日本を含むアジア圏初のデジタル3D実写長編映画として、『アバター』に先行して公開され大きな話題となりました。同作はヴェネチア国際映画祭の3D部門や特別招待作品として上映され、国際的な評価も得ています。また、同年には世界市場を強く意識し、全編英語で製作された塚本晋也監督作『鉄男 THE BULLET MAN』をプロデュース。サンディエゴのコミコンでの発表やヴェネチア国際映画祭コンペティション部門への出品など、海外の映画祭で多数の成果を収めました。2011年には清水崇監督との3D作品第二弾『ラビット・ホラー3D』を製作するなど、3D技術の探求を続けました。
劇場映画に加えて、テレビドラマや配信コンテンツなど、多様なメディアでの企画・プロデュースも積極的に行っています。2014年には連続テレビドラマ『アラサーちゃん 無修正』の企画を担当。同年、サンリオとコラボレーションした極彩色3Dミュージカル・ファンタジー映画『くるみ割り人形』では、既存のフッテージにデジタル技術を組み合わせるという革新的な手法で新たな映像世界を創造しました。2015年には園子温監督の『リアル鬼ごっこ』を手がけ、モントリオール・ファンタジア国際映画祭で作品賞を含む主要3部門を受賞。そのスピンオフとして、若手監督たちによる配信オリジナルドラマ『リアル鬼ごっこ ライジング』も企画・プロデュースしました。さらに、GYAO！初のオリジナル配信ドラマ『女子の事件は、大抵トイレで起こるのだ。』（白石和彌監督）では、配信版と劇場公開版を両方展開するなど、フォーマットの可能性を追求しています。
また、過去作品の価値を現代に引き上げる取り組みとして、4Kリマスター化のプロデュースも行っています。2015年にはフィルム撮影の『さくらん』や『博士の愛した数式』の4K版を、2016年にはテレビアニメシリーズ『ハチミツとクローバー』全話の4K版を製作し、ブルーレイ発売などを実現させました。2017年には、羽海野チカ原作、大友啓史監督の大型企画『3月のライオン』2部作を完成させ、共同配給で公開。その他にも、『愛のむきだし【最長版 ザ・テレビショー】』の企画プロデュース、YouTubeなど新たなプラットフォーム向けの映像コンテンツ企画にも関わるなど、常に時代の動きを捉えながら精力的に活動を続けています。
著作を通じた知見の発信
自身の豊富なプロデュース経験や映像技術に関する知見を、著作という形で発信していることも谷島氏の活動の特徴です。共著として出版された『3D世紀／驚異！立体映画の100年と映像新世紀』では、3D映像の歴史、技術、そして自身の担当である「製作」の側面から、特に『戦慄迷宮3D』の企画・製作の舞台裏や、体感映画の追求について詳細に記述しています。また、キネマ旬報ムック『デジタル時代の映像クリエイター』では、プロデューサー養成講座の内容などを基に、デジタル化が進む時代の映像制作やプロデュースについて執筆。『戦慄迷宮3D』や『鉄男 THE BULLET MAN』といった挑戦的な作品の企画・製作プロセスを具体的に解説し、クリエイターやプロデューサーを目指す人々へのサジェスチョンを提供しています。
このように、学生時代からの映像への情熱を原点に、宣伝、製作、そしてプロデュースとキャリアを広げながら、劇場映画から配信、テレビ、YouTubeに至るまで、多様なプラットフォームで常に新しい表現や技術を取り入れ、国際的な視野を持って作品を生み出し続ける谷島正之氏は、現代日本映画界において多大な貢献を果たしているプロデューサーと言えるでしょう。
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