谷萩那華雄

谷萩那華雄：陸軍少将の生涯

谷萩那華雄（やはぎ なかお）は、1895年（明治28年）に茨城県で生まれ、1949年（昭和24年）に処刑された大日本帝国陸軍の軍人です。最終階級は陸軍少将。彼の生涯は、軍人としてのキャリア、報道部長としての活動、そして戦後の悲劇的な結末によって特徴づけられます。

軍人としてのキャリア

谷萩は1917年（大正6年）に陸軍士官学校を卒業し、歩兵少尉に任官されました。その後、シベリア出兵に従軍し、陸軍大学校を卒業。教育総監部や第19師団での勤務を経て、陸軍技術本部付兼軍事調査委員（新聞班）に就任。1930年代には、重慶、関東軍、青島など、中国各地を転々としました。1937年（昭和12年）には歩兵中佐に進級し、北支那方面軍司令部付に異動。その後も、太原特務機関長や中支那派遣軍参謀などを歴任し、日中戦争に出征しました。

大本営陸軍報道部長としての活動

太平洋戦争開戦後の1942年（昭和17年）3月、谷萩は陸軍兵器本部付（大本営陸軍報道部長）に就任。この時期、彼はメディアとの連携を密にし、戦意高揚のための広報活動を積極的に行いました。しかし、その一方で、言論統制にも深く関与。1942年9月、日本読書新聞に掲載した書評で、細川嘉六の論文を「共産主義宣伝」と断じ、細川を治安維持法違反で検挙させるきっかけを作りました。この出来事は、彼の報道部長としての影響力と、言論統制への関与を示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

戦争終結と戦犯としての処刑

1943年（昭和18年）3月に陸軍少将に進級した谷萩は、その後、第15独立守備隊長や独立混成第25旅団長を歴任し、最終的には第25軍参謀長に就任しました。終戦後、彼はBC級戦犯容疑者として起訴され、捕虜虐待の罪で死刑判決を受け、1949年にスマトラ島のメダンで処刑されました。この悲劇的な結末は、戦争の残酷さと、軍人の責任の重さを物語っています。

人となり

谷萩は、その人柄もまた特筆に値します。元大本営陸軍報道部員の平櫛孝によれば、谷萩は話術に優れ、開放的で明るい性格であったとされています。報道部長時代には、新聞や雑誌社の記者との会談に積極的に応じ、その人柄は記者たちの間でも評判が良かったようです。また、茨城訛りのフランス小咄風の猥談を得意としており、そのユーモラスな一面は、重苦しい会議の雰囲気を一変させることもあったと言います。しかし、その一方で、書類決裁のために訪れた首相官邸で東條英機の妻を女中と間違えるなど、少し抜けた一面もあったようです。

まとめ

谷萩那華雄は、軍人として、また報道部長として、激動の時代を生きた人物です。彼の生涯は、軍人としてのキャリア、報道部長としての活動、そして戦後の悲劇的な結末と、多面的な側面を持っています。彼の功績と過ちは、歴史を学ぶ上で重要な教訓を与えてくれます。

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
福川秀樹『日本陸軍将官辞典』芙蓉書房出版、2001年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
平櫛孝 『大本営報道部 言論統制と戦意高揚の実際』光人社NF文庫、2006年。
* 金澤敏子、向井嘉之、瀨谷實、西村央『スモモの花咲くころに 評伝 細川嘉六』能登印刷出版部、2019年。

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