豊川鉄道電機50形電気機関車

豊川鉄道電機50形・鳳来寺鉄道電機51形電気機関車

豊川鉄道電機50形と鳳来寺鉄道電機51形は、1925年（大正14年）に豊川鉄道およびその傍系事業者である鳳来寺鉄道が導入した直流電気機関車です。イギリスのイングリッシュ・エレクトリック社 (EE) 製で、各社1両ずつ、計2両が輸入されました。

これらの機関車は、当時の国鉄（鉄道省）が東海道本線電化時に導入したED50形などと同じ、いわゆる「デッカー」の一種ですが、他の「デッカー」が箱型車体であるのに対し、両形式は凸型である点が特徴です。日本国内では、凸型の「デッカー」はこの2形式のみです。

運転台の前後にボンネットを備え、台車はボンネットの前端からさらに前方に張り出した独特な形状をしています。

導入後の変遷

1930年（昭和5年）10月、豊川鉄道の電機50形はデキ50形に、鳳来寺鉄道の電機51形はデキ100形 (100) にそれぞれ改称されました。さらに1938年（昭和13年）1月には、鳳来寺鉄道のデキ100がデキ50形デキ50に、翌日には豊川鉄道のデキ50がデキ50形デキ51に改番されています。

1943年（昭和18年）8月、両社は戦時買収により鉄道省に編入され、両形式は私鉄時代の番号のまま、デキ50形として飯田線で使用されました。1952年（昭和27年）の称号規定改正で、国鉄形式ED28形に統合され、鳳来寺鉄道由来のデキ50がED28 1、豊川鉄道由来のデキ51がED28 2となりました。

ED28 2は国鉄在籍のまま、一時的に京福電気鉄道福井支社に入線したこともあります。

ED28 1は1956年（昭和31年）に、ED28 2は1959年（昭和34年）に廃車されましたが、その後、ED28 1は近江鉄道へ、ED28 2は遠州鉄道へ譲渡され、いずれも国鉄時代の番号のまま使用されました。

近江鉄道に譲渡されたED28 1は、1963年（昭和38年）に西武所沢車両工場に売却され、降圧改造の上、山形交通に再譲渡。ED1形式のED2と改番され、同社の高畠線で1974年（昭和49年）の同線廃止まで使用されました。

一方、遠州鉄道に譲渡されたED28 2は、2023年現在も車籍を保持しており、主に遠州西ヶ崎駅構内に常駐し、工事列車の牽引などに使用されています。遠州鉄道では、入線時に直流1,500Vから600Vへの降圧改造が施され、後に遠州鉄道の昇圧に伴い750Vに再昇圧されました。

遠州鉄道ED28形

遠州鉄道では、西鹿島線で工事列車の牽引に使用され、通常はホキ800形とともに遠州西ヶ崎駅に留置されています。遠州鉄道では、廃車後の解体を遠州西ヶ崎駅の留置区画で行うため、その際には西鹿島駅や新浜松駅に回送されます。

工事等の作業は終電から初電の間に行われるため、夜間の走行が主です。検査期限を延ばすため、使用しない時期には休車扱いとなることがあり、検査時には再塗装されることがあります。入場時には2000形などの旅客車両に牽引されます。

主要諸元

電気方式: 直流750V
主要寸法（最大長×最大高×最大幅）: 9,090mm×2,405mm×4,090mm
主電動機定格出力: 74kW×4基
制動方式: 元空気溜管式自動空気ブレーキ

経歴

1925年11月：豊川鉄道電機50形50、鳳来寺鉄道電機51形51としてイングリッシュ・エレクトリック社より輸入。
1930年10月：電機50形をデキ50形50に形式変更。電機51形をデキ100形100に形式変更し改番。
1938年1月19日：デキ100形を（鳳来寺鉄道）デキ50形50に形式変更。豊川鉄道デキ50形を51に改番。
1943年8月：戦時買収により豊川鉄道及び鳳来寺鉄道が鉄道省に編入、形式・車番は据え置き。
1952年：形式をED28形に変更。元鳳来寺デキ50がED28 1、元豊川デキ51がED28 2となる。
1956年2月1日：ED28 1が廃車となり近江鉄道へ譲渡、形式・番号とも国鉄時代のまま。
1959年：ED28 2が廃車となり遠州鉄道へ譲渡、国鉄での形式消滅。
1960年2月5日：ED28 2が遠州鉄道で運用開始、形式・番号とも国鉄時代のまま。
1963年：近江鉄道ED28 1が西武所沢車両工場に売却、降圧改造の上、山形交通に再譲渡、ED2となりED1形に編入、高畠線配置。
1974年11月18日：山形交通高畠線が廃線、ED2は廃車後リナワールドにて静態保存。
* 2012年11月：ED2がリナワールドから撤去、撤去後の処遇は不明。

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