豊辺新作

豊辺新作：不屈の騎兵将校

豊辺新作（とよべ しんさく、1862年6月23日 - 1927年3月22日）は、日本の陸軍軍人であり、騎兵将校として日清戦争と日露戦争で重要な役割を果たしました。最終階級は陸軍中将。

生い立ちと初期の軍歴

豊辺は長岡洋学校と陸軍幼年学校を経て、1882年に陸軍士官学校を卒業。当初は騎兵第一大隊附、教導団騎兵中隊小隊長、三本木軍馬補充部勤務と、目立った活躍はありませんでした。大尉に昇進したものの、周囲からは無能と見なされ、予備役入りも近いと囁かれていたほどです。しかし、日清戦争での活躍が、彼の評価を大きく変えることになります。

日清戦争での活躍

1894年、豊辺は騎兵第五大隊第一中隊長として日清戦争に出征。大島義昌率いる第九旅団に属し、仁川に上陸。開戦直後、偵察任務を命じられ水原から出撃。七原を拠点に情報収集を行い、牙山へ向かう途中で清軍と遭遇し、緒戦を戦いました。その後も偵察活動を続け、清軍が牙山から成歓へ移動したことを突き止め、成歓の戦いへと繋げました。

鳳凰城一番乗り

10月29日、豊辺は2個小隊を率いて鳳凰城へ進撃。守備兵が城に火を放ったため、豊辺は撤退と判断して城内に突入。51名という少人数で鳳凰城を占領することに成功しました。この功績により、戦後少佐に昇進。

日露戦争での活躍

日露戦争では、教導団騎兵隊長、騎兵第九連隊長を経て、1901年に騎兵第十四連隊長に就任。秋山好古が率いる騎兵第一旅団、通称「秋山支隊」に所属し、曲家店の戦いなど数々の戦闘に参加。その中でも最大の激戦が、黒溝台会戦における沈旦堡の戦いです。

沈旦堡の死守

1905年1月23日、ロシア軍は96000人の兵力を投入し、日本軍への攻勢を開始。豊辺支隊は沈旦堡の守備を任されます。ロシア軍の猛攻に対し、豊辺は小樹子、北台子、小台子に部隊を配置。自身は残りの兵力で沈旦堡を守り抜きました。ロシア軍は砲撃によって豊辺支隊に大きな損害を与え、各所の守備隊が退却。しかし、ロシア軍は沈旦堡を誤認して占領報告を送るなど混乱しました。豊辺支隊は歩兵の増援を得て、夜には雪が降る悪条件の中、必死の防戦を続けます。翌日、ロシア軍の攻撃は緩み、日本軍は反撃を開始。最終的に、ロシア軍は退却し、黒溝台会戦は終結しました。豊辺支隊の沈旦堡死守が、日本軍反撃の支えとなり、危機を救いました。

その後

1908年、樺太守備隊司令官に就任。少将に昇進。その後も騎兵関係の役職を歴任し、騎兵監を務めました。1913年に中将に進級し、1918年に予備役入り。従三位勲二等功三級に叙せられました。墓所は多磨霊園にあります。

豊辺家について

豊辺の父は越後長岡藩士の豊辺陳善で、豊辺家は禄高八十石の家柄でした。豊辺は上京後、小林虎三郎家に寄宿しています。豊辺は長男であり、弟は米国で農業に従事、姉は小西信八の妻となりました。妻は宮崎県高鍋の士族矢野氏の娘で、二男三女をもうけています。次女は魚雷の専門家である岸本鹿子治に嫁ぎました。また、豊辺の祖父は河井家の出身で、長岡藩家老の河井継之助と親戚関係にありました。

栄典

豊辺は以下の位階と勲章を授与されています。

位階
1892年1月12日 - 正七位
1913年1月30日 - 従四位
勲章
1895年10月18日 - 勲五等双光旭日章・功五級金鵄勲章
1914年5月16日 - 勲二等瑞宝章
1915年11月7日 - 大正三四年従軍記章
1915年11月10日 - 大礼記念章（大正）

豊辺新作は、日清・日露戦争において、その勇猛さと不屈の精神で数々の戦いを勝利に導き、日本の危機を救った英雄です。

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