象郡

象郡（しょう-ぐん）

象郡は、古代中国の王朝が現在のベトナム北部から広西チワン族自治区にかけての一帯に設置したとされる郡です。ただし、その正確な地理的範囲や歴史的経緯については、複数の説が存在します。

概要

象郡設置の背景には、紀元前214年（秦の始皇33年）、秦朝による南方への領土拡大政策がありました。秦は、逃亡者や貧しい家の婿、商人などを動員し、南方の未開の地を征服しました。この結果、桂林郡、象郡、南海郡の3つの郡が新たに設置されました。

しかし、秦朝が滅亡すると、趙佗という人物が桂林郡と象郡を攻撃し、併合してしまいます。趙佗は自立し、南越武王を名乗り、南越国を建国しました。

紀元前202年（漢の高帝5年）、漢の高祖は、呉芮を長沙王に封じ、長沙国を立てさせました。長沙国は、長沙郡、豫章郡、象郡、桂林郡、南海郡を管轄するとされましたが、実際には象郡は南越国の支配下にありました。

紀元前111年（漢の武帝の元鼎6年）、漢の武帝は南越国を滅ぼし、南海郡、蒼梧郡、鬱林郡、合浦郡、交阯郡、九真郡、日南郡、珠厓郡、儋耳郡の9つの郡を設置しました。このうち、日南郡はもとの秦の象郡にあたるとされています。

象郡の地理的範囲をめぐる異説

日南郡を秦の象郡の郡治が置かれた地とする記述は、その後の歴史書にも引き継がれました。日南郡が現在のベトナムに位置していることから、象郡をベトナム北部とみなす説が有力です。しかし、以下の記述が、象郡の地理的範囲をめぐる異説を生む原因となっています。

紀元前76年（漢の元鳳5年）、象郡は廃止され、その領域は鬱林郡と牂牁郡に分割されたとされています。この記述から、象郡がベトナム北部だけでなく、広西チワン族自治区の一部を含んでいた可能性も指摘されています。

このように、象郡の地理的範囲については複数の説が存在し、確定的な結論は出ていません。今後の研究によって、より詳細な情報が明らかになることが期待されます。

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