貞辰親王

貞辰親王（さだときしんのう）

貞辰親王は、平安時代の前期から中期にかけて生涯を送った皇族で、清和天皇の第七皇子にあたります。875年に親王宣下を受けた彼は、当時の政治情勢の中で特に注目を集める存在でした。

経歴の概要

貞辰親王は清和朝末の貞観17年、つまり西暦875年に親王宣下を受けました。その後、884年に起こった陽成天皇の退位に際しては、皇位継承の候補として名が挙がりました。この時、貞辰親王は摂政・藤原基経の唯一の外孫であったため、有力な皇嗣候補と見なされていました。貞辰の母は藤原基経の娘、女御・藤原佳珠子です。

しかし、皇太后・藤原高子と陽成上皇の影響を排除した基経は、皇位を時康親王（後の光孝天皇）に継がせる決断をしました。この背景には、内輪の者ではなく成人の皇子を立てることで、勢力を強化しようとする基経の狙いがあったと考えられています。光孝天皇は即位後、全ての皇子女を臣籍降下させ、皇太子を立てることもありませんでした。

光孝天皇は即位からわずか3年後の887年に病に倒れ、再度の皇嗣選定が必要となります。この際、光孝天皇の第七皇子である源定省が立てられましたが、貞辰親王は指名されませんでした。実際、基経は14歳の貞辰親王を元服させ、皇嗣に擁立することが可能であったものの、陽成上皇と高子の存在が基経をためらわせた結果とも考えられています。

その後、元服を済ませた貞辰親王は四品に叙せられましたが、最終的には929年4月21日に薨去し、享年は56歳でした。貞辰の最終位階は四品でした。

異伝と神社

貞辰親王は現代においても東京都墨田区向島にある牛嶋神社や、葛飾区の王子白髭神社の祭神として祀られています。王子白髭神社の社伝によれば、天慶元年（938年）に貞辰が東国を巡行中にこの地で没したとされています。彼の存在は、その後の信仰に影響を与え続けています。

官歴

• - 貞観17年（875年）10月15日：為親王
• - 時期不詳：四品
• - 延長7年（929年）4月21日：薨去（四品）

系譜

• - 父：清和天皇
• - 母：藤原佳珠子（藤原基経の娘）

貞辰親王の生涯は、平安時代の皇族としての激動の歴史を象徴しています。彼の結末は、当時の政治情勢の影響を色濃く受けており、貞辰親王が有力な皇嗣候補でありながら、最終的にその地位に至らなかったことは、平安時代の皇統を巡る複雑な力関係を示す良い例となっています。

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