賀知章

賀知章（が ちしょう）

賀知章（659年 - 744年）は、中国唐代の詩人であり、書家としても名を残しました。字は季真、または維摩といい、会稽郡永興県（現在の浙江省蕭山市）の出身です。

経歴

玄宗に仕え、開元年間に礼部侍郎となり、集賢院学士を兼ねました。その後、工部侍郎に移り、秘書監を授けられています。「賀監」という異名は、この秘書監の官職名に由来します。晩年は官を辞して故郷に帰り、「四明狂客」と号して、86歳で亡くなるまで自然に囲まれた生活を送りました。

飲中八仙

賀知章は、その詩人としての才能もさることながら、酒を愛し、豪放磊落な人柄で知られていました。狂草を得意とした書家の張旭とも親交があり、酒席では、その場の感情の赴くままに詩を作り、筆を走らせたといいます。杜甫の詩『飲中八仙歌』では、酒を愛した8人の仙人の筆頭として登場します。

書家としての功績

賀知章は、書家としても優れた作品を多く残しています。現存する書蹟としては、以下のものが知られています。

『孝経』: 孝経の全文を草書で書いたもので、賀知章の署名はありませんが、末尾に「建隆二年（961年）冬重粘表賀監墨蹟」と小楷で記されており、古くから賀知章の真蹟と伝えられています。江戸時代中期に日本に渡り、近衛家熙の所蔵となり、長らく近衛家に保管されていましたが、明治時代初期に皇室に献納され、現在は三の丸尚蔵館に所蔵されています。書風は王羲之風の重厚感があり、筆の運びは鋭く、全体として力強く、洗練された美しさを持っています。
『隔日不面帖』
『東陽帖』
『敬和帖』

詩人としての才能

賀知章は、詩人としても一流の才能を持っていました。特に、自然や故郷を題材とした詩は、多くの人々に愛されています。李白とも親交があり、互いに影響を与え合ったと言われています。代表的な詩としては、以下のものがあります。

『回郷偶書』: 故郷に帰った時の感慨を詠んだ七言絶句です。

> 少小離家老大回
> 郷音無改鬢毛衰
> 児童相見不相識
> 笑問客従何処来

『詠柳』: 柳の美しさを詠んだ七言絶句です。

> 碧玉妝成一樹高
> 萬條垂下緑絲條
> 不知細葉誰裁出
> 二月春風似剪刀

『題袁氏別業』: 袁氏の別荘に滞在した際に詠んだ五言絶句です。

> 主人不相識
> 偶坐為林泉
> 莫謾愁沽酒
> 嚢中自有銭

参考文献

『日本と中国の書史』 - （社）日本書作家協会発行 木村卜堂著 - 1971年

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