賦役

賦役とは

賦役（ぶえき、ふえき）とは、歴史的に農民のような特定の階級の人々に課せられた労働義務であり、公共事業のために無償または非常に低い賃金で働かされることを指します。これは、強制労働とは異なり、通常は断続的で、期間が限定されている点が特徴です。賦役は、古くから存在した課税形態の一つであり、十分の一税のような金銭による課税とは異なり、土地や作物、金銭を持たない人々にも課すことができるため、経済的に未発達な社会で広く見られました。

賦役の起源と語源

賦役を意味する英語の「corvée」は、ローマ時代に起源を持ちます。後期ローマ帝国では、市民が税の代わりに公共事業（opera publica）に従事することが義務付けられていました。多くの場合、それは道路や橋の建設でした。また、ローマの領主たちは、小作人や解放奴隷に労働力を提供させることができました（opera officiales）。

中世ヨーロッパでは、農奴に毎年課される労働は「opera riga」と呼ばれ、主に耕作や収穫の形で行われました。必要に応じて、領主は追加の労働（opera corrogata）を課すこともありました。この「corrogata」が変化して「corvée」となり、定期的なものと例外的なものの両方の意味を持つようになりました。中世の労働賦役は、完全に無給ではありませんでした。慣例的に、労働者はその場で消費される食事という形でわずかな支払いを受けることができました。賦役は、時には徴兵や軍事物資の徴用も含む広範な概念でした。

賦役の歴史

賦役は、世界各地でさまざまな形で存在しました。

エジプト
古代エジプトでは、ピラミッドや神殿、運河などの建設に賦役が利用されました。紀元前1350年頃のアマルナ文書にも賦役に関する記述があり、19世紀後半まで公共事業は賦役によって行われました。ムハンマド・アリーの時代には、賦役は段階的に縮小し、徴兵制への移行が進められました。

フランス
フランスでは、1789年のフランス革命まで賦役が存在し、革命とともに廃止されました。しかし、反革命派によって一時的に復活したこともあります。カナダのヌーベルフランス地域では、荘園領主制とともに賦役が存続しました。

ハイチ
アンリ1世支配下の北ハイチでは、要塞建設のために賦役が課せられました。また、1915年に米軍がハイチに展開した際にも、インフラ整備のために労働賦役が施行され、多くの犠牲者が出ました。

中国
皇帝が支配した時代の中国では、万里の長城や大運河などの建設に賦役が利用されました。始皇帝の時代には特に負担が大きく、民衆の反発を招きました。

日本
律令制下の日本では、庸や雑徭と呼ばれる賦役がありました。

マダガスカル
フランスの植民地時代には、人頭税と賦役が組み合わされた制度が導入され、労働力の確保と経済の近代化が図られました。

フィリピン
スペイン統治下では、「polo y servicios」という労働制度が存在し、公共事業のために男性に労働が課せられました。

ポルトガルのアフリカ植民地
モザンビークなどのポルトガル植民地では、すべての健常男子に年6ヶ月の労働が義務付けられ、失業者とみなされた人々が強制的に働かされました。このシステムは「Chibalo」と呼ばれ、1962年まで続きました。

ルーマニア
ルーマニアでは、「clacă」と呼ばれる賦役制度が存在し、農民は地主のために労働を提供することを義務付けられていました。1864年に農地改革が行われましたが、農民は債務により半農奴的な生活に戻ることもありました。

ロシア
ロシアでは、「barshchina」と呼ばれる賦役があり、農奴は地主の土地で働きました。1797年には、週に3日の賦役が推奨されました。

アメリカ合衆国
アメリカ合衆国では、独立革命後、貨幣経済の発展とともに賦役は衰退しましたが、南北戦争後には南部で公共労働として一時的に復活しました。1910年代にアラバマ州で廃止され、アメリカにおける賦役の歴史は終わりました。

現代における賦役

現代でも、ミャンマー政府が賦役を使用していることが知られています。また、ブータンでは伝統的な規範に基づき、ゾン建設などの公共事業に労働が用いられています。

結論

賦役は、歴史的に世界各地で存在した労働制度であり、社会構造や経済状況と密接に結びついていました。その形態は時代や地域によって異なりましたが、人々に無償または低賃金での労働を強いるという点では共通していました。現代ではほとんど見られなくなりましたが、その歴史は社会の構造や変遷を理解する上で重要な要素となっています。

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