赤松義村

赤松義村（あかまつよしむら）は、戦国時代前期、室町時代後期にあたる時代の播磨国（現在の兵庫県南西部）を支配した守護大名、そして戦国大名です。赤松氏の第10代当主として、播磨・備前・美作の三国に勢力を拡大しました。彼は、赤松家中興の祖として知られる赤松政則の婿養子であり、その跡を継いで家督を相続しました。

義村の家系は、赤松氏の第5代当主である範資から始まる七条家の流れを汲んでいます。義村は範資の6代目の子孫にあたり、彼の父は七条政資でした。以降、赤松宗家は義村の家系が継承し、江戸時代直前に滅亡するまでその血筋が続きました。

生涯

出生と家督相続

義村の生年については、文明2年（1470年）、文明4年（1472年）、延徳2年（1490年）、明応3年（1494年）など諸説あります。ただし、これらの説は赤松家の系図や後世の軍記物に基づいているため、政則の生年や元服の時期を考慮すると、文明年間の生まれである可能性は低いと考えられています。

幼名は道祖松丸（さえまつまる）といい、これは赤松家の歴代当主が用いた幼名です。また、通称は二郎と称し、これもまた赤松家の歴代当主が名乗ったものでした。

養父であり岳父でもある政則は、嘉吉の乱によって一時滅亡した赤松氏を再興した功績者です。しかし、政則には男子がいなかったため、義村は延徳元年（1489年）に政則の婿養子となり、明応5年（1496年）に政則が急死したため、その後を継ぎました。ただし、政則の死は突然であったため、義村の家督相続は政則自身の意思ではなく、政則の時代から赤松家中で大きな力を持っていた重臣、浦上則宗、別所則治、小寺則職、薬師寺貴世、赤松則貞らによって画策されたものとも伝えられています。

当主就任時、義村はまだ幼少であったとされていますが、婿養子になった際、妻である政則の娘（小めし）が18歳であったことから、義村もほぼ同年であったと考えられます。政則の没後3ヶ月後の7月には奈良へ出陣していることから、成人していたと推測できます。政則の急死後、赤松家は混乱し、没後4ヶ月後の8月には播州錯乱と呼ばれる内乱が起こり、家老で守護代の浦上則宗が勢力を拡大しました。これに対し、一族の浦上村国が則宗と対立し、播磨国内で内乱が勃発しました。当時の幕府管領であった細川政元が明応8年（1499年）末に仲裁に入っています。則宗が文亀2年（1502年）に死去したため、義母である洞松院が義村の成人まで後見役を務めました。

幕府での政争と最期

京の幕府では、細川政元の死後、永正4年（1507年）から同6年（1509年）の間に義村は元服し、二郎を名乗ったとされています。また、10代将軍・足利義尹（のちの義稙）と11代将軍・足利義澄の間で権力争いが起こると、赤松家は先代の政則の代から阿波細川家（細川澄元の実家）と関係が深かったこともあり、当初は義澄側を支持しました。しかし、永正8年（1511年）の船岡山合戦で義澄が敗北した後は、将軍への返り咲きが確実となった義尹と和睦し、その証として同9年（1512年）11月には義尹から偏諱と官途を与えられ、「兵部少輔義村」と名乗りました。その一方で、義澄の子である亀王丸（のちの12代将軍足利義晴）を引き取って養育するなど、中央への影響力を保持しました。

成人し親政を行うようになった義村は、重臣である浦上村宗や小寺則職の補佐を受けつつ、奉行制を導入し大名権力の強化を図りました。しかし、権力が制限されることを嫌った村宗らの反発を受け、永正15年（1518年）には、村宗が居城である備前三石城に退去してしまいます。これに怒った義村は同16年（1519年）、則職らと共に軍を率いて備前・美作の村宗の根拠地を攻撃し、一時的に優勢となりましたが、浦上氏を支持する国人たちの抵抗や、村宗配下の名将・宇喜多能家の活躍により敗北を重ね、赤松氏の権威は失墜し、逆に播磨への村宗の侵攻を許すこととなりました。

永正17年（1520年）11月には、村宗側からの要請により、嫡子である才松丸（後の政村）を引き渡し隠居を余儀なくされました。その後、何度か復権を試みたものの、叶いませんでした。

永正18年（1521年）正月、足利亀王丸を奉じて挙兵するも村宗に敗れ、その後村宗側からの和睦の申し出に応じたところ、謀略によって捕縛され、播磨の室津城に幽閉されました。そして、同年9月17日（元号が変わり大永元年）、村宗が放った刺客によって暗殺されました。

家督は、遺児である才松丸（後の政村、政祐、晴政）が継承し、守護家としての赤松氏の名目は存続を許されたものの、赤松家は衰退の一途を辿ることとなりました。

なお、名水播磨十水を定めたのはこの義村であるとされています。

辞世の句は

立よりて影もうつさし流れては　浮世を出る谷川の水

偏諱を与えた人物として、赤松村秀、赤松村吉、赤松村景、赤松村虎、在田村長、有馬村則、有馬村秀、宇野村頼、宇野村春、浦上村宗、浦上村国、喜多野村綱、小寺村職、広岡村宣、別所村治などが挙げられます。

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