越婢加朮湯

越婢加朮湯（えっぴかじゅつとう）

越婢加朮湯は、漢方医学において、関節リウマチをはじめとする、熱や腫れ、痛みなどの症状を緩和するために用いられる処方です。比較的体力のある方や、病気の初期段階に適しているとされています。

概要

越婢加朮湯は、後漢時代の医学書『金匱要略』に記載されている古い処方です。この処方は、表証（病気の急性期）、実証（体力充実）、熱証（炎症）、湿証（水分停滞）という状態に対して効果を発揮します。体力がある実証タイプの方に向いており、胃腸が弱い方や、発汗が多い方には不向きです。

主に、以下の症状や疾患に対して用いられます。

腎炎
ネフローゼ
関節リウマチ
湿疹
むくみ（浮腫）
口渇
夜尿症
尿量減少
花粉症

越婢加朮湯は、熱（炎症）を発散させ、水分バランスを調整する作用があります。これにより、関節の熱や腫れ、痛みを和らげる効果が期待できます。関節炎や関節リウマチ、粘膜の腫れを伴う花粉症などに用いられます。ただし、関節リウマチに関しては、近年西洋医学の進歩が著しいため、漢方薬のみでの治療は推奨されません。

また、水分調整作用は、体内の水分の偏り（水毒）を改善し、むくみを伴う腎炎、ネフローゼ、湿疹、夜尿症、花粉症などにも効果が期待できます。

五苓散との使い分けとしては、熱感の有無がポイントとなります。熱感を伴う場合には、越婢加朮湯が選択されることが多いです。

構成生薬

越婢加朮湯は、以下の6種類の生薬から構成されています。

麻黄（まおう） 6.0g
石膏（せっこう） 8.0g
蒼朮（そうじゅつ） 4.0g
大棗（たいそう） 3.0g
甘草（かんぞう） 2.0g
生姜（しょうきょう） 1.0g

注意事項

以下の患者さんには、越婢加朮湯の投与に際して慎重な注意が必要です。

虚証、裏証の方
循環器系に疾患のある方：麻黄に含まれるエフェドリン類は、交感神経を刺激する作用があるため、高血圧、心臓病、脳卒中などの既往歴がある方は注意が必要です。越婢加朮湯の1日量には、約60mgのエフェドリンが含まれています。
発汗が多い方、胃腸が弱い方
腎臓病、排尿障害、甲状腺機能亢進症のある方
花粉症の方：効果が高い反面、自己判断で過剰に摂取してしまう可能性があるため、注意が必要です。

また、以下の薬剤との併用には注意が必要です。

エフェドリンやテオフィリンなど、交感神経刺激作用のある薬
エフェドリン類含有製剤、他の麻黄剤、甘草含有製剤、甲状腺製剤、カテコールアミン製剤、テオフィリン、グリチルリチン製剤

高齢者には、減量するなど慎重に投与する必要があります。また、胃もたれなどの症状が現れた場合は、減量するか、二陳湯などの他の漢方薬との併用を検討します。

副作用

越婢加朮湯の服用により、以下の副作用が現れることがあります。

偽アルドステロン症：血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ、筋肉の痙攣、脱力感など
ミオパチー：筋肉痛、脱力感など
* その他：胃の不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、発疹、発赤、かゆみ、動悸、不眠、発汗過多、排尿困難、精神興奮、イライラ感など

これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師または薬剤師に相談してください。

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