趙秉鈞

趙秉鈞：清末民初の政治家、警察制度の創始者

趙秉鈞（ちょう へいきん、1859年 - 1914年）は、清末から民初にかけての政治家で、袁世凱の腹心として活躍しました。字は智庵。彼は、近代的な警察制度の創設に尽力した人物として知られています。また、国務総理を務めたものの、宋教仁暗殺事件に関与した疑いがもたれ、その生涯は謎に包まれたまま幕を閉じました。

事跡

初期のキャリアと警察制度の創設

1878年、趙秉鈞は左宗棠率いる楚軍に参加し、新疆に赴任しました。その後、1883年にはイリでの国境画定業務に従事し、1889年には直隷省の官吏となります。1899年には直隷保甲局総弁として巡防営を指揮し、翌年の義和団の乱では鎮圧に当たりました。この時期、李鴻章の知遇を得ています。

1902年、趙は保定巡警局総弁に任命され、その手腕を買われて知府兼塩運使相当官に昇進しました。この時、袁世凱の命を受け、日本から招聘した警官と協力して、近代的な警察制度の設立に尽力しました。保定に警務学堂を創設した後、天津南段巡警局総弁に転任すると、天津にも巡警学堂を設立。翌年には両学堂を合併し、北洋巡警学堂を新設し、人材育成にも力を注ぎました。

1905年には清朝に巡警部が設立され、趙は袁世凱の推薦により巡警部右侍郎に任命され、実質的に巡警部のトップに立ちました。しかし、巡警部を袁世凱の私的な情報機関として利用したとも言われています。1909年、袁世凱が失脚すると、趙も一時的に職を離れましたが、辛亥革命勃発後の1911年には、袁世凱が内閣を組織するとともに、民政部大臣として復帰しました。

国務総理就任と宋教仁暗殺事件

中華民国成立後の1912年、趙秉鈞は唐紹儀内閣で内務総長に任命されました。しかし、袁世凱の指示を受け、唐紹儀を辞職に追い込みます。その後、陸徴祥内閣でも内務総長を務め、陸徴祥が弾劾されると、代理国務総理を経て正式に国務総理に就任しました。当初は国民党との協調姿勢を見せていましたが、次第に対立を深めていきます。

1913年、国民党が選挙で勝利すると、袁世凱の意を受けて、宋教仁暗殺を画策し、実行しました。この事件により世論からの批判を受け、同年7月に国務総理を辞任しました。その後、歩軍統領兼管京師巡警、北京警備地域司令官などを務め、12月には直隷都督に任命されています。

突然の死とその真相

1914年2月27日、趙秉鈞は天津の督署内で急死しました。享年55歳。その死因については、袁世凱が宋教仁暗殺の証拠隠滅のために毒殺したという説が広く信じられていますが、確証はありません。ただし、趙の部下からの報告では、急性の症状により大量出血を伴い死亡したことが伝えられており、少なくとも異状死であったことは確かです。1915年、袁世凱が皇帝に即位すると、趙は一等忠襄公を追贈されました。


趙秉鈞の生涯は、激動の時代を生き抜いた政治家の姿を象徴しています。警察制度の創設に尽力し、国務総理まで務めた一方で、暗殺事件に関与した疑いをかけられ、謎めいた最期を遂げた彼の人生は、今なお多くの謎に包まれています。

参考文献

李宗一「趙秉鈞」中国社会科学院近代史研究所『民国人物伝 第2巻』中華書局、1980年。
劉寿林ほか編『民国職官年表』中華書局、1995年。ISBN 7-101-01320-1。

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