国府台合戦とは
国府台合戦(こうのだいかっせん)は、戦国時代に
下総国府台城(現在の
千葉県市川市)一帯で繰り広げられた、北条氏と
里見氏を中心とする房総の武将たちとの間の合戦です。この合戦は、大きく分けて天文7年(
1538年)の第一次合戦と、
永禄6年(
1563年)および7年(
1564年)の第二次合戦に分類されます。
国府台城
国府台城は、元々
千葉氏の分裂時に
太田道灌によって築かれたとされています。
下総国の玄関口として、また房総から武蔵への侵攻における橋頭堡として機能しました。しかし、政治的な重要性は比較的低い城でした。
背景
古河公方足利政氏とその子高基の不和から、高基の弟・
足利義明が
小弓公方として擁立され、
古河公方や
千葉氏と対立しました。義明は当初、北条氏綱と和睦しましたが、真里谷氏の内紛を機に関係が悪化し、
1538年、里見義堯らと国府台城に入ります。一方、氏綱も嫡男氏康らと共に
江戸城に兵を進め、両軍は対峙しました。
小弓軍の内訌
小弓軍の軍議では、
江戸川を渡河する北条軍を討つことで合意しましたが、義明は自身の武勇を過信し、上陸した敵を迎え撃つと主張しました。里見義堯は、義明を見限り、戦場から離脱する準備を始めます。
戦闘
10月7日、北条軍は松戸方面で小弓軍と衝突。当初は小弓軍が優勢でしたが、数で勝る北条軍が押し始めました。義明は、弟や息子の討ち死にを知り、逆上して突撃、
戦死します。里見義堯は義明の死を知ると、戦わずして戦場を離脱。小弓軍は崩壊しました。北条軍は小弓城と真里谷城を制圧し、真里谷信応を降伏させ、信隆を当主としました。
戦後
この戦いで北条氏は下総に勢力を拡大しました。義明の死後、上総南部は空白地帯となり、里見義堯が侵攻、
久留里城や
大多喜城を占領しました。また、
古河公方の御料所の扱いを巡り、
北条氏康と足利晴氏の間に対立が生じました。
関宿城・葛西城目標説
近年の研究では、義明の最終目標は
鎌倉ではなく、
下総国関宿城であったとする説が出ています。
関宿城は
水運の要所であり、
古河公方の重要拠点でした。また、葛西城を目標としていたとする説もあり、義明が
関宿城、そしてその先の古河御所を攻略するために、葛西城は重要な中継地点であったと考えられています。
背景と経緯
第一次合戦後、国府台は
千葉氏の重臣
高城胤吉の所領となりましたが、
千葉氏が北条氏の傘下に入ったため、北条領となりました。
1563年、武田信玄と
北条氏康が
上杉謙信方の松山城を攻撃した際、里見義堯は息子の義弘を救援に向かわせますが、国府台で北条軍と衝突。この戦いが後に翌年の戦いと混同され、「第二次合戦」として一括りに扱われるようになりました。
開戦の契機
1563年末、
江戸城守将太田康資が主君に不満を持ち、
上杉謙信に寝返りを図って失敗。里見義弘は翌
1564年、房総の武将を率いて国府台城に入ります。北条氏も援軍を送り、両軍は再び激突します。
遠山・富永・舎人の死
1月7日、北条軍は里見軍を攻撃。先陣の
遠山綱景と富永直勝は、康資の離反を察知できなかった責任を感じ、先行して
江戸川を渡り、国府台を攻撃します。しかし、里見軍の反撃に遭い、遠山と富永、そして舎人経忠が
戦死。連携作戦は大きく狂いました。
北条軍の反撃
里見軍は勝利に気を良くし、兵士に酒を振る舞います。しかし、北条軍は撤退を装い、翌8日未明に夜襲を仕掛けます。混乱の中、里見軍の土岐為頼が裏切り、正木信茂は
戦死。義弘は、安西実元の身代わりと酒井胤治の救出により、辛くも戦場を脱出しました。
近年の再検証
近年の研究により、合戦の経過は
1563年と
1564年の戦いが混同されたものだと考えられています。
1563年にも本格的な戦闘があったとする史料も発見されており、従来の記録は再検討されています。
戦後
1564年の戦いの後、北条軍は上総に進出。土岐為頼や正木時忠を服属させました。しかし、里見軍は積極的な軍事行動で北条軍を牽制し、三船山合戦での勝利によって北条氏の安房遠征を阻止、再び膠着状態となりました。
史跡
国府台城址は、現在「里見公園」として整備されています。城跡には、里見軍将兵の供養塔が建てられています。
脚注
参考論文
- - 千野原靖方「国府台合戦と里見・後北条氏の軍事組織について―天文・永禄期の有力家臣配置と軍編成―」『房総の郷土史』9号、1981年。
- - 原田正記「永禄六年国府台合戦の発掘―西原文書の再検討―」『戦国史研究』8号、1986年。
- - 竹原健「国府台合戦永禄六年勃発説の再検討」『國學院雑誌』89巻4号、1988年。
- - 千野原靖方『東葛の中世城郭』崙書房、2004年2月20日。ISBN 4-8455-1101-0。NCID BA66529054。
外部リンク