足緘

足緘（あしがらみ）

足緘は、相手の膝を屈伸方向ではなく横方向に極める、または膝を捻る柔道の関節技です。講道館や国際柔道連盟 (IJF) で正式名として採用されています。別名として「足搦み」「脚がらみ」とも表記されます。IJF略号はAGR/P06です。

概要

足緘は、まず取が受の足元に仰向けに倒れ、受の右足を左脇に抱えます。次に、取は左脚を受の両脚の間に差し入れ、受の右脚の後ろ、外側、前、内股へと絡めます。そして、受を取の右側に横倒しにし、左脚を伸ばすようにして受の右膝を極めます。

歴史

1910年（明治43年）に旧制高等学校の一高と二高の対抗戦で足緘が使用され、一高の選手が膝関節を脱臼する事故が発生しました。しかし、高専柔道においては、その後もしばらく使用されていました。『月刊秘伝』誌によると、高専柔道審判規程で足緘が禁じ手になったとされています。1921年までには禁止技となり、同年7月の第8回全国高専大会で膝十字固めが初めて使用された際、禁止技である足緘ではないかという疑念から乱闘寸前の騒ぎが発生しました。

講道館では、脱臼事故の翌年である1911年（明治44年）10月15日を最後に足緘が禁止されました。講道館柔道試合審判規定においては1916年に禁止技として明記されています。大日本武徳会柔術試合審判規定では、資料によって禁止時期にずれがあり、『柔道大事典』によると1899年、『大日本武徳会武道専門学校一覧』によると1924年（大正13年）4月まで、『最新スポーツ大事典』によると1925年に禁止となっています。書籍『秘録日本柔道』では、禁止時期は講道館の前後であるとされています。

他の組技系格闘技における扱い

ブラジリアン柔術では、国際ブラジリアン柔術連盟、国際柔術連盟ともに禁止技です。サンボでも同様に禁止技となっています。ただし、1975年の書籍『秘録日本柔道 改訂普及版』には、サンボでは当時試合で使用されていたという記述があります。1950年に日本で旗揚げした国際柔道協会のプロ柔道でも、ライターの増田俊也氏によると禁止技でした。一方、書籍『秘録日本柔道』では解禁になったともされています。

変化技

縦四方膝挫（たてしほうひざひしぎ）

縦四方固からの足緘です。縦四方固の状態から、両足の甲を受の両足の甲に内側から当て、両膝を一旦閉じながら両脚を開き、徐々に伸ばして受の両膝関節を捻ります。腹で受の腹を抑え、上体を反ります。上体を密着させて肩固併用縦四方固の形にしても良いとされています。神道六合流では、基本形を「足緘」、この技を「足搦（あしがらみ）」と呼んでいます。

補足

柔道界などでハーフガードポジションのことを「足緘」、「足搦み」などと呼ぶ場合がありますが、これは本項で解説している関節技とは異なるものです。

分類と名称

1985年、講道館は講道館固技名称を制定・発表しましたが、禁止技であるにもかかわらず足緘が含まれていました。関節技の禁止技としては唯一の存在でした。1995年9月、千葉市での国際柔道連盟 (IJF) 総会で、IJF教育委員会（佐藤宣践委員長）が検討してきたIJF技名称を制定し、講道館と同様に足緘を含めました。1998年2月、ドイツ・ミュンヘンでのIJF教育委員会（中村良三委員長）での検討を経て、ドイツ・ガルミッシュでのIJF理事会で承認されたIJF技名称改正で「禁止技」という新たなグループを設置し、足緘を「関節技」グループから移動させました。

もう一度検索