辛憲英

辛憲英（しん けんえい）

辛憲英（191年 - 269年）は、中国三国時代の魏に生きた女性です。字は憲英。父は魏の辛毗（しんぴ）、弟は辛敞（しんしょう）。夫は羊耽（ようたん）で、子に羊瑾（ようきん）、羊琇（ようしゅう）がいます。西晋の武将として知られる羊祜（ようこ）は甥にあたります。

生涯

辛憲英は、激動の時代を生き抜き、その聡明さで家族を守りました。

袁家内紛からの脱出: 204年、父・辛毗が仕えていた袁譚（えんたん）と袁尚（えんしょう）が後継争いで対立。辛憲英は、父を恨む袁尚配下の審配（しんぱい）から捕われそうになりますが、家族と共に脱出に成功します。

曹丕への危惧: 217年、曹丕（そうひ）が魏の太子に任命された際、父が曹丕に喜ばれたことを知ると、「憂慮すべき立場を喜ぶとは、魏の未来は安泰ではない」と嘆きました。

司馬懿のクーデター: 249年、司馬懿（しばい）がクーデターを起こした際、弟の辛敞が曹爽（そうそう）に味方すべきか迷います。辛憲英は「主君に忠義を尽くすべき」と助言。辛敞は曹爽の下へ駆けつけますが、後に曹爽は処刑。しかし、辛敞は忠義を評価され、処刑を免れました。

鍾会の野心を警戒: 262年、甥の羊祜から鍾会（しょうかい）が蜀漢征討を命じられたと聞くと、鍾会の独断専行を危惧し、羊祜に注意を促しました。

鍾会の乱: 263年、子の羊琇が鍾会の参軍として蜀漢征討に従軍。辛憲英は羊琇に注意を与えており、鍾会が謀反を起こし多くの将兵が殺される中、羊琇は無事に帰還しました。

269年、辛憲英は79歳で亡くなりました。

『晋書』列女伝には、辛憲英が質素倹約を重んじ、羊祜から贈られた華美な服を裏返しにしたという記述があります。しかし、『太平御覧』には、裏返しにする服を贈ったのは従外孫の胡毋楊（こぶよう）であると記述されています。また、羊琇が贈った錦の肩掛けも着用しなかったとされています。盧弼は、『三国志集解』において、羊祜が質素な人物で、羊琇が贅沢な生活を好んだことから、辛憲英に華美な服を贈ったのは羊祜ではなく羊琇であると指摘しています。

三国志演義

小説『三国志演義』にも、司馬懿のクーデターについて弟に助言する場面が登場します。

参考文献

『三国志』魏志辛毗伝
『晋書』列女伝
『太平御覧』夏侯孝若集・羊太常辛夫人伝

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