近江鉄道100形電車 (2代)

近江鉄道100形電車

近江鉄道100形電車は、西武鉄道から譲渡された新101系および301系を改造して導入された通勤形電車です。本項では、100形電車を「本系列」と表記し、各編成の近江八幡・貴生川方先頭車であるモハ100形の車両番号を編成呼称とします（例：101-1101の編成は「101編成」）。

概要

2009年（平成21年）に西武鉄道から譲り受けた新101系電車を、近江鉄道の自社車両基地で改造し、モハ100形とモハ1100形の2両編成として、2013年（平成25年）から2018年（平成30年）にかけて5編成が導入されました。

近江鉄道では過去に、元岳南鉄道1100形電車を譲り受けた車両群に「100形」の形式称号を与えており、本系列はそれに続く2代目となります。101編成には「湖風号」の愛称ロゴが貼付されています。

導入にあたっては、900形と同様に、ワンマン運転対応改造、行先表示器のLED化、バリアフリー対応改造などが実施されました。側面にはローマ字入りのLED行先表示器が新設され、車内の運賃表示器は液晶ディスプレイが採用されています。ただし、優先席のクロスシート化は行われていません。車体塗装は、900形とは異なるデザインとなっています。104編成以降の編成には、扉の開閉時に作動するドアチャイムと表示灯が新設されました。

また、元301系電車を種車とする104編成と105編成については、中間電動車であったモハ301形に制御車クハ1301形の先頭部構造を移設して先頭車化改造が施されました。このため、同2編成は乗務員扉の直後の側窓がないことが他の編成と異なります。

車体塗装は、滋賀県東部を走る鉄道会社として、県内全域に親しみを持ってもらうことを目指し、琵琶湖をイメージした水色（オリエントブルー）に白帯を巻いたデザインが採用されました。

主要機器は、西武時代から大きな変更はありません。900形では、制動装置が西武時代のHSC電磁直通ブレーキから、近江鉄道に在籍する他の形式と同様のHRD-1電気指令ブレーキに改造されましたが、100形ではHSCのままとなっています。

編成

編成ごとの特徴は以下の通りです。各編成は、西武在籍時の種車の前面排障器（スカート）の有無、座席モケットの色、車内へのLED式扉開閉表示灯の設置の有無、元301系を種車とする104編成・105編成では運転台直後の窓がないなどの差異があります。


さらに、同社の「2022年度安全報告書」において、2021年12月に発生した脱線事故への対策として、100形にスノープラウを取り付けることが発表されました。2022年12月頃より、102編成と103編成にスノープラウが新たに取り付けられています。

運用

101編成は、2013年（平成25年）12月17日に近江八幡駅で出発式が行われ、近江八幡～八日市間を運行した臨時快速列車で運用を開始しました。12月21日・22日には彦根車両基地で一般公開されています。当初は、高宮駅の車両限界に抵触するため、多賀線を除く各線で運用されていましたが、対応工事が完了し、多賀線にも入線するようになり、以降は全線で運転されています。102編成は、運用開始前に西武時代の黄色塗装のまま試運転が行われました。また、各種ヘッドマークを取り付けて運転されることもあります。

2023年5月には、100形では初の全面ラッピングが104編成に実施されました。滋賀県のキャラクター「しがのハグ＆クミ」をメインに、特定健康診査・がん検診の受診を啓発する広告編成となっています。

関連項目

他社の西武新101系の譲渡車
流鉄5000形電車
秩父鉄道6000系電車
上信電鉄500形電車
伊豆箱根鉄道1300系電車
三岐鉄道751系電車
近江鉄道900形電車

脚注

注釈

出典

参考文献

雑誌記事
『鉄道ピクトリアル』通巻881号「鉄道車両年鑑2013年版」（2013年10月・電気車研究会）
「車両データ - 2012年度（民鉄車両）」 pp. 217-228
『鉄道ピクトリアル』通巻884号「【特集】西武鉄道」（2013年12月・電気車研究会）
柴田東吾「西武101系・301系の足跡」 pp. 205-212
『鉄道ピクトリアル』通巻896号「鉄道車両年鑑2014年版」（2014年10月・電気車研究会）
岸上明彦「2013年度民鉄車両動向」 pp. 119-145
近江鉄道（株）鉄道部工務課電車区 橋本雄馬「近江鉄道 900形・100形」 pp. 178
「民鉄車両諸元表」 pp. 196-199
「車両データ - 2013年度（民鉄車両）」 pp. 224-235
『鉄道ピクトリアル』通巻909号「鉄道車両年鑑2015年版」（2015年10月・電気車研究会）
「車両データ - 2014年度（民鉄車両）」 pp. 237-248
『鉄道ピクトリアル』通巻951号（2018年10月・電気車研究会）
岸上明彦「2017年度 民鉄車両動向」 pp. 149-165
『私鉄車両編成表 2019』（2019年7月・交通新聞社）
「近江鉄道」 pp. 118
「私鉄（JR各線を除く民鉄各企業体）全路線」 pp. 209-219
『鉄道ピクトリアル』通巻965号（2019年10月・電気車研究会）
岸上明彦「2018年度 民鉄車両動向」 pp. 121-146
『トラベルMOOK 新しい西武鉄道の世界』（2019年10月・交通新聞社）
柴田東吾「戦後の西武電車の車歴」 pp. 54-69
Web資料
“近江鉄道に新形式車100形が登場か”. railf.jp（鉄道ファン・交友社） (2013年11月4日). 2020年1月3日閲覧。
“近江鉄道100形が営業運転を開始”. railf.jp（鉄道ファン・交友社） (2013年12月22日). 2020年1月3日閲覧。
“近江鉄道で多賀線開業100周年記念イベント”. railf.jp（鉄道ファン・交友社） (2014年3月12日). 2020年1月3日閲覧。
“近江鉄道の西武 新101系改造車が本線試運転”. railf.jp（鉄道ファン・交友社） (2014年3月30日). 2020年1月3日閲覧。
“近江鉄道100形に第2編成が登場”. railf.jp（鉄道ファン・交友社） (2014年4月19日). 2020年1月3日閲覧。
“近江鉄道の、もと西武301系が100形塗装に”. railf.jp（鉄道ファン・交友社） (2017年8月30日). 2020年1月5日閲覧。
“近江鉄道で「鉄道むすめコラボヘッドマーク」”. railf.jp（鉄道ファン・交友社） (2018年5月17日). 2020年1月5日閲覧。
“【JR貨＋西武＋近江】元西武101・301系 近江鉄道へ譲渡”. 鉄道ホビダス（レイルマガジン・ネコ・パブリッシング） (2013年2月5日). 2020年1月5日閲覧。
“【近江鉄道】100形104編成運転開始”. 鉄道ホビダス（レイルマガジン・ネコ・パブリッシング） (2017年11月8日). 2020年1月5日閲覧。
“【近江鉄道】102編成にヘッドマーク掲出”. 鉄道ホビダス（レイルマガジン・ネコ・パブリッシング） (2019年2月6日). 2020年1月5日閲覧。
“【近江】近江高校 必勝！ヘッドマーク掲出中”. 鉄道ホビダス（レイルマガジン・ネコ・パブリッシング） (2019年8月5日). 2020年1月5日閲覧。
* “近江鉄道100形、12月17日に出発式…車内見学会も実施”. Response. (2013年12月17日). 2020年1月3日閲覧。

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