近肖古王

近肖古王の王朝と影響

近肖古王（きんしょうこおう、生年不詳 - 375年）は、百済の第13代王として346年から375年まで在位しました。彼は百済の第11代王である比流王の第二子であり、中国や日本の史料で初めて百済王の名が確認される重要な人物です。

王の概要

近肖古王の時代には、百済の建国神話が語る紀元前18年という起源から、歴史的な視点での初見が得られる重要な時期を迎えます。『資治通鑑』には、345年に百済の記録が見えはじめ、372年には東晋に対して初の朝貢が行われました。これにより、百済は4世紀に国際的な舞台に顔を出すこととなりました。

著名な歴史学者K.J.H. GARDINERは、近肖古王の父親である比流王が百済の初代王である温祚王の兄、沸流王と同一であると考えており、これまでの百済王の多くが虚構であると主張しています。また、李基東という朝鮮古代史の研究者は、百済による馬韓の併合は近肖古王の治世に行われたとし、重要な歴史的事実を提唱しています。

王の治世

346年9月、先代の契王の死去に伴い王位を継承した近肖古王は、新羅との良好な関係を維持しながら、高句麗との戦闘を継続しました。369年には雉壌城で高句麗軍に奇襲をかけ、多大な戦果を挙げました。371年には太子と共に高句麗の平壌を攻撃し、故国原王を討ち取るという偉業を成し遂げています。372年には東晋に対し朝貢を行い、その後に鎮東将軍および楽浪郡太守に任命されるなど、積極的な外交政策を展開しました。

そのほか、倭国に対しては369年に作られた七支刀を贈与し、百済と倭、さらには東晋の連携による高句麗への対抗を試みました。この外交戦略は次代の近仇首王に引き継がれ、百済の外交の基本方針となります。

375年7月、北部辺境の水谷城が高句麗に占領されたため、王は反撃を試みましたが、結果は芳しくなく、次の出征は不作の影響により実現しませんでした。このように、近肖古王の治世には困難も伴いましたが、彼の業績は文化や外交の面でも重要なものでした。

倭との関係

近肖古王の治世は日本との関係においても欠かせないものがありました。『古事記』によれば、応神天皇の時代、百済は馬と『論語』『千字文』を貢上したとされていますが、これが近肖古王の時代に当たる可能性が高いとされます。史実では、『論語』や『千字文』がまだ成立していなかったとされる点でも、その伝承の正確性に疑問が投げかけられています。

ただし、その後の研究によって、阿知吉師や和邇吉師が実在したのかどうかでも議論が続いています。いずれにせよ、近肖古王の時代に初めて百済において漢字が伝わり、文字文化が根付くきっかけとなったことは間違いありません。これは、百済にとって重要な文化的な転換期を意味します。

考察

近肖古王の治世は単なる王の世代交代以上のものであり、彼自身が百済初代王の可能性を持つ人物であるとの考えも浮かび上がっています。記録に残る史料との比較や、彼の行った外交戦略を通じて、その意義は華やかにはっきりとしてきます。近肖古王の統治と百済の発展は、古代朝鮮史における重要な一ページとして語り継がれることでしょう。

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