近衛経忠

近衛経忠について

近衛経忠（このえ つねただ）は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した公卿であり、特に関白や左大臣としての役職を務めたことで知られています。経忠は関白・近衛家平の子として誕生し、近衛家の第8代当主でもありました。また、彼は後猪熊関白や堀河関白とも称され、家門の権力争いに巻き込まれながらも、政治的な舞台で存在感を示しました。

経歴の概要

経忠は、正和3年（1314年）11月に従三位に任ぜられ、元亨4年（1324年）4月には右大臣に昇進しました。彼が関白に就任したのは元徳2年（1330年）1月で、当時左大臣であった鷹司冬教を超えての抜擢でした。これは後醍醐天皇から特に信任を受けていた結果とされていますが、わずか7ヶ月で辞任しました。その際、経忠は内覧宣旨を受けることとなります。このような人事の背景には、冬教が自邸に籠るなかでの天皇の配慮と、関白を含む内覧の体制を維持する意図があったとされています。

経忠の家系においては、彼の祖父である近衛家基には二人の息子がいました。この対立は経忠やその従弟である基嗣との間にも受け継がれ、家門争いが続きました。基嗣は後醍醐天皇の皇女と結婚しており、経忠にとっては強力なライバルでした。

政治的な役割と南朝への仕官

建武政権下での経忠は再び天皇からの重用を受け、建武元年（1334年）2月には右大臣として復帰しました。その後、同年の11月には左大臣に昇進しました。しかし、延元元年（1336年）8月、足利尊氏の入京に伴い、持明院統の光明天皇が擁立されると、経忠は再び関白として宣下を受けます。しかし後醍醐天皇が京都を脱し、吉野に潜幸する中、彼は吉野朝廷（南朝）に仕官することを決意しました。

この決断によって、経忠は職を辞し南朝へ赴くことになります。北朝側はそれに激怒し、経忠の関白職を解消、基嗣にその後任を任命しました。南朝では左大臣に就任しましたが、思うような志を遂げられず、興国2年（1341年）には再び京都に戻ることになります。戻った後も経忠は冷遇され、限られた地位の中で名誉を回復できない状況が続きました。

後の活動と最期

その後、経忠は藤氏長者として、関東の小山氏や小田氏に呼びかけて藤氏一揆を企てます。この一揆は北朝との和平工作において困難を伴う要因となりましたが、最終的には計画が頓挫しました。正平一統の際には一招きに入って家門を安堵されたものの、まもなくその状況は破綻し、南朝の行宮である賀名生（現在の奈良県五條市）に移動しました。

正平7年（1352年）8月12日に彼は出家し、翌日水腫が原因で亡くなりました。享年51でありました。彼の業績は後の時代に語り継がれ、勅撰和歌集には彼の詩もいくつか収められています。近衛経忠の生涯は、権力闘争に翻弄された中での彼の才覚や、政局における行動の重要性を物語っています。

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