近鉄モト51形電車

近鉄モト51形電車は、近畿日本[[鉄道]]が製造した事業用電車の1形式です。改番や改造を経て、現在はモト75形として2両が現存しています。

概要

1969年9月21日に実施された奈良・橿原・京都線の架線電圧昇圧工事に伴い、従来使用されていた無蓋電動貨車（モト50形、モト60形、モト70形）が老朽化のため廃車となりました。これらの代替として、昇圧で廃車となったモ430形（旧奈良電気[[鉄道]]デハボ1000形）の電装品や台車を流用し、直流1,500Vに対応した新設計の車体に搭載したモト51 - 54の4両が、同年近畿車輛で製造されました。

モト51形は以下の2種類に区分されます。

モト51・53: 片運転台式の制御電動貨車(Mc)。主制御器と菱枠パンタグラフを搭載し、奈良寄りに運転台を備えます。
モト52・54: 片運転台式の制御電動貨車(M'c)。電動発電機や空気圧縮機を搭載し、上本町寄りに運転台を備えます。

奇数番号車と偶数番号車は背中合わせに永久連結され、偶数番号車に電動発電機や空気圧縮機を集約搭載しています。奇数番号車に搭載された主制御器1基で、偶数番号車を含む2両分8基の主電動機を一括制御する1C8M制御を採用しているため、1両ずつに分割して使用することはできません。

車体

全溶接構造の乗務員室を備える平床構造の全金属製車体です。橿原線の建築限界拡大以前の設計であるため、全長18,720mm、最大幅2,590mmと、奈良線中型車に近い寸法となっています。乗務員室は運転台側妻面を切妻の2枚窓構成とするなど、先行するモト2720形に類似した設計ですが、同時期設計の8000系の影響を受け、やや丸みを帯びたデザインとなっています。前照灯や尾灯は、8000系と共通のシールドビーム2灯+標識灯内蔵型尾灯2セットという近代的な構成です。車体は台枠上にはみ出すように搭載されており、台枠にはトラス棒が設置されていません。

モト51・53の乗務員室は奥行きが長く、1段下降式の側窓3枚を備える添乗作業員室が設置されています。屋根上には東洋電機製造PT-42菱枠パンタグラフを搭載します。一方、モト52・54は乗務員室部が短くコンパクトにまとめられており、パンタグラフは搭載されていません。そのため、積載最大荷重はモト51・53が13t、モト52・54が15tとなっています。荷台部分には背の低い鋼製あおり戸が設置されており、モト51・52は電動クレーンを荷台に設置しています。

主要機器

主に昇圧工事で廃車となった旧奈良電気[[鉄道]]デハボ1000形（モ430形449・451-453）の発生品を流用しています。

主電動機: 東洋電機製造TDK-520S（端子電圧500V時定格出力75kW、定格回転数757rpm）を吊り掛け式で各台車に2基ずつ計4基装架します。
主制御器: 三菱電機ABF電動カム軸制御器を搭載します。
ブレーキ: A動作弁によるAMA自動空気ブレーキ（Aブレーキ）を搭載します。
台車: 住友製鋼所84A-34-BC3釣り合い梁式台車を装着します。

運用

奈良・橿原・京都の各線で使用する保線用車両として、新製以来2両1組でレール運搬などに使用されました。1971年にはモト51 - 54がモト75形75 - 78に改番されました。1970年代中盤には、台車と主電動機が600系（初代）からの廃車発生品である住友金属工業KS-33Lと三菱電機MB-213AFへ交換されました。

1985年には、廃車となったモ1470形の機器を流用して高性能車化が図られ、台車は近畿車輛KD-36、主電動機は三菱電機MB-3028-A2へ交換されました。ブレーキは基礎ブレーキ装置が台車シリンダー式となったため中継弁併用とされましたが、弁装置そのものは従来通りのA動作弁によるAMA-RL自動空気ブレーキが引き続き搭載されました。

モト75・76は名古屋線へ転属後、1991年に廃車となりました。モト77・78は西大寺検車区配置のレール運搬用として残されましたが、1998年にモワ11・12（2代目）の代替として大改装を受けました。

主な改造点は以下の通りです。

台枠の大幅補強と荷台側面の鋼製あおり戸の撤去
制御器を三菱電機ABFM-214-15MDHへ交換し、1C4M制御の両運転台式単独電動車へ変更
モト77への追加運転台の搭載と既存運転台後方の作業員室の機器室への変更、側窓の廃止および機器用ルーバーの設置、モト78へのこれに準じた機器室付き運転台の新製搭載と東洋電機製造PT-42パンタグラフの搭載
主電動機を三菱電機MB-3110-Aへ交換
ブレーキシステムをHSC-D発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキへ変更
台車を近畿車輛KD-60へ交換
* 連結器を大阪市交通局形密着連結器へ交換

モト77・78は、ほとんどの部品を交換し車体にも大きく手を入れるという新造に近い大改造が実施され、車体の長いモト90形97・98に匹敵する強力電動貨車となりました。外観はモト77とモト78で大阪市交通局形密着連結器の装着位置が反対である以外はほぼ完全に同一形状となりました。

7000・7020系の回送の際には、モト77・78の電気連結器付き廻り子式密着連結器が編成の外側に出るように組成し、7000・7020系6両編成を3両ずつに分割して挟み込み、牽引力を確保するために荷台に死重となるブロックを複数積載した状態で運転されます。

このような経緯を経て、モト75・76は廃車となりましたが、モト77・78の2両は現存し、電気的な規格が異なるために奈良・橿原・大阪の各線を自力走行できない7000・7020系の五位堂検修車庫での定期検査に欠かせない車両として運用されています。モト77・78は機器・車体共に元の姿を全くとどめていませんが、「デハボ」の形式称号を冠した奈良電気[[鉄道]]引き継ぎ車の車籍を継承する現存最後の車両です。2019年4月1日現在の配置検車区は西大寺検車区です。

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