近鉄1480系電車

近畿日本鉄道1480系電車

近畿日本鉄道（近鉄）大阪線で活躍した1480系電車は、大阪線の特殊な路線環境に対応するために開発された通勤形電車です。本項では、1480系の概要、詳細な構造、改造、運用、そして増備型である2470系、鮮魚列車に改造された1481系についても解説します。

概要

大阪線は、近鉄の標準軌路線の中でも特に長距離の急勾配区間を有しており、車両には抑速制動の装備が必須でした。そのため、大阪線で運用される車両は、全電動車方式か、高出力の主[[電動機]]を搭載して電動車比率を高める必要がありました。1950年代には、沿線の宅地開発が進み、輸送量が急増したため、近鉄はモ1450形や1460系といったWNドライブ・片側3扉の通勤形電車を投入しました。

しかし、輸送量の増加は著しく、片側3扉車体だけでは対応しきれませんでした。そこで、南大阪線用6800系の車体設計を踏襲した1470系を1959年に投入し、比較的平坦な上本町駅 - 河内国分駅間の普通列車を中心に運用しました。この実績を踏まえ、河内国分以東の伊勢方面への直通列車にも使用できるよう、出力向上を図り、付随車も連結可能としたのが1480系・2470系です。

1480系

1961年、1470系の改良増備型として1480系が登場しました。編成は、モ1480形（Mc、偶数）とモ1480形（M、奇数）をユニットとして固定し、これにク1580形(Tc)またはク1590形(Tc)を連結する構成となりました。ク1590形は増結用で電動発電機を装備しており、平坦区間では電動車と制御車が2両ずつの4両編成として運行可能でした。

モ1480形（奇）は、近鉄の高性能通勤車としては初めての中間電動車で、連結部の窓の割り付けが左右対称になっているのが特徴です。これは、その後の通勤形電車とは異なる点で、中間車と制御車で窓の割り付けが異なるのは本系列のみです。

車内はロングシートで、座席の色はエンジ色でした。ドア横の立席スペースが広く取られているため、座席定員は先頭車・中間車ともに48名と、他の統一規格車（58 - 64名）に比べて少なくなっています。冷房装置は搭載せず、押し込み型通風器が屋根上に設けられました。貫通路は、モ1480形（奇）－モ1480形（偶）のユニット間は広幅、その他は狭幅でしたが、2・3次車はすべて広幅となりました。ク1581 - ク1583の3両はトイレを装備し、団体専用列車や長距離列車にも使用されました。

1961年から1966年にかけて、3両編成9本27両、ク1590形5両（3次製造分）の計32両が製造され、その後の大阪線用3両編成の新製車は2430系に移行しました。

主要機器

駆動方式はWNドライブで、主[[電動機]]は三菱電機製の125 kWモーターMB-3020Dを装備しています。これは、先行して落成した10100系や名古屋線1600系と同一のものです。制御装置は1C8M制御の三菱製単位スイッチ式抵抗制御で、モ1480形（奇）に搭載されています。台車は近畿車輛製のシュリーレン式金属ばね台車ですが、新造品のKD-36CやKD-56A、10100系から流用したKD-30C・KD-30Bを装着する車両が混在していました。集電装置はMc車に1台搭載されていましたが、後に2台装備に変更されました。ブレーキは発電および抑速併用電磁直通ブレーキです。

改造

1965年から車体塗装があかね色1色に改められ、1968年頃から全車が近鉄マルーン1色になりました。トイレ付きのク1581 - ク1583の3両は、1966年に名古屋線急行用に転用され、1600系に編入されてク1780形に形式変更されました。その後、運転台を撤去してサ1780形となりました。1969年にはATS設置工事が行われ、運転台の形状が近鉄共通仕様に変更されました。また、ク1588・1589の2両は電動発電機を装備してク1596・1597に改番されました。

1982年からは冷房化（集約分散式を1両あたり4台設置）および車体更新が行われ、方向幕が設置され、3両固定編成に組成変更されました。3両固定編成への組成変更時には、ク1580形、ク1590形のほか、ク2580形（2470系）、ク2590形（2410系）との連結も行われました。一方で、ク1590形ク1592 - ク1595の4両は運転台を撤去の上、2代目サ1550形サ1553 - サ1556となり、2430系の内、3両編成だった2433F - 2436Fの中間車として組み入れられました。1986年からは車体塗装が近鉄マルーン1色から近鉄マルーンレッド・シルキーホワイトの2色塗装に順次変更されました。

鮮魚列車への転用・形式変更

1989年3月には、1481Fが鮮魚列車に改造され、1481系に変更されました。

廃車

1988年に1487F・1489Fが冷房化されずに廃車となり、1989年にはク1581 - ク1583を改造したサ1780形が廃車されました。それ以外は1997年から1999年にかけて全車が廃車されました。

2470系

1966年に登場した2470系は、1480系の増備タイプですが、車両番号が不足することから系列が変わりました。編成はモ2470形（Mc、偶数） + モ2470形（M、奇数） + ク2580形（Tc）の3両編成で、当初はク2580形は切り離せるようになっていました。車体は、両先頭車は1480系や1600系の設計を踏襲していますが、中間車のモ2470形（奇）がモ1480形（奇）と異なり、側面窓は一方が2連窓となりました。1979年に冷房化と固定編成への組成変更が行われ、1985年と1986年にかけて車体前面および側面の方向幕設置や車体更新も行われました。

2002年8月までに全車両が廃車され、現存しません。2470系の営業運転終了により、単位スイッチ式の制御器を搭載した車両は近鉄における営業線上から姿を消しました。

1481系

1989年3月に1480系の1編成が改造された鮮魚列車で、2代目となります。車体はマルーンレッドを基調として窓下に白帯を入れたデザインで、冷房化が行われ、集約分散式装置が1両あたり3台設置されました。2001年11月をもって廃車となりました。

運用

1480系・2470系は、大阪線全線で運用され、河内国分以西の平坦区間では、ク1590形・ク2580形を増結した2M2T編成でも運用されました。大阪線の最小編成両数が4両編成となった90年代以降は順次名古屋線に転属し、3両編成の運転が多い名古屋線系統の普通列車でも運用されました。

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