近鉄6441系電車

近鉄6441系電車

近鉄6441系電車は、1958年に近畿日本鉄道名古屋線に導入された通勤形電車です。当時の最新技術を盛り込みつつ、既存の機器を有効活用することでコストを抑え、名古屋線の輸送力向上に貢献しました。

概要

6441系は、大阪線向け1460系と同様の20m級両開き3扉の軽量車体を採用しています。1460系が完全新造のカルダン駆動方式だったのに対し、6441系は旧型車両から流用した機器を用いた吊り掛け駆動方式を採用することで、初期コストを削減しました。台車はイコライザー式の日本車輌製造D16や川崎車輛ボールドウィン形、主制御器は東洋電機製造ES-517-A、主電動機は東洋電機製造TDK-528-C、集電装置は東洋電機製造TDK-C2を使用しています。これらの機器は、伊勢電気鉄道モニ6231形やク6501形・ク6511形から捻出されたものが再利用されました。

編成は、名古屋寄りに制御車のク6540形、伊勢中川寄りに制御電動車のモ6440形を連結した2両編成を基本とし、他系列との併結は行わず、2両または4両編成で運用されました。側窓の位置は1460系やモ1421形よりも若干高く、ヘッドライトは1460系と同様の1灯式を採用。登場時は、モ1450形で初めて採用されたベージュに青帯の塗装でした。連結器は自動連結器で、取り付け部分の車体前面裾がモ1421形と同様に少し下がっていました。歯車比は3.44、ブレーキはA自動空気ブレーキのままで、最高速度は100km/hでした。新造時には跳ね上げ式の吊り手が装備されていました。

形式番号は特急車である6421系、6431系からの連番となっていますが、6441系は登場時より通勤車として運用されました。名古屋線用の完全新造通勤車である1600系よりも1年早く登場したため、軽量車体を採用した初の名古屋線通勤車となりました。名古屋線では、その後も1000系や旧1200系、2680系、2000系といった旧車機器流用車が重点的に投入されており、6441系はその先駆けと言えます。

運用

当初は5編成が製造されましたが、1959年の名古屋線改軌時に台車を円筒案内式の近畿車輛KD-31C（モ6441形）・日本車輌製造ND-10（ク6541形）に交換。主制御器も日立製作所MMC-H10Jに交換されましたが、駆動方式は吊り掛け式のままでした。1960年には、新造当初から標準軌台車を装備する車両として5編成が増備されました。この際も、台車・主電動機・主制御器などはモニ6231形の廃車発生品が流用されています。

1968年にはヘッドライトがシールドビーム2灯式に改造され、1974年には主電動機がモ6301形搭載の東洋電機製造TDK-528-17IMに交換され、出力が向上しました。

6441系は、3扉吊り掛け駆動ながら20m級の大型車で収容力があり、長らく名古屋線で運用されました。1979年から1983年にかけて再度狭軌化され、養老線（現・養老鉄道養老線）へ転属し、老朽化した小型車両を置き換えました。この際、主電動機を三菱電機MB-148AFに換装し、牽引力を増大させました。また、モ6446 - モ6450を電装解除して増結用Tcとし、ク6546 - ク6550に運転台の向きを合わせるため方向転換されました。狭軌化の際に台車も交換されています。

1984年4月には、支線区車両番号の3桁化に伴い440系に改番されました。同時にTc化されたク6446 - ク6450はク550形556 - 560に改番されています。後に一部車両は、廃車となった南大阪線6800系の台車に交換されました。

近鉄では1980年代中盤以降、通勤車のマルーンレッドとシルキーホワイトのツートンカラー化が進められましたが、440系は廃車までマルーンレッド一色のままで、冷房化改造も行われませんでした。車体の老朽化が進んでいたこともあり、養老線車両の高性能化と冷房化のため転入してきた600系によって代替され、1992年8月から廃車が始まり、1994年12月に全廃となりました。

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