迦陵頻伽

迦陵頻伽（かりょうびんが）

迦陵頻伽は、仏教に登場する伝説上の生物で、上半身が人間、下半身が鳥という独特の姿をしています。サンスクリット語の「カラヴィンカ(kalaviṅka)」を音訳したもので、その美しい姿と声は、古くから仏教美術や文化の中で重要な役割を果たしてきました。

特徴

• - 姿: 上半身は菩薩のような人間の姿で、翼を持ち、下半身は鳥の形をしています。この姿は、仏教における理想的な存在を象徴するとも言われています。
• - 声: 殻の中にいる時から鳴き始めるとされ、その声は非常に美しく、仏の声に例えられます。そのため、「妙音鳥」、「好声鳥」、「妙声鳥」、「逸音鳥」などとも呼ばれます。
• - 住処: 『阿弥陀経』では、極楽浄土に共命鳥と共に住むとされています。浄土を飾る存在として、その姿は様々な場所に描かれてきました。

図像表現

迦陵頻伽は、浄土の美しさを表現するために描かれることが多く、同時に如来の教えを称える意味も込められています。

• - 中国: 中国の仏教壁画では、人頭鳥身の姿で描かれることが多いです。
• - 日本: 日本の仏教美術では、有翼の菩薩形の上半身に、鳥の下半身を持つ姿で描かれるのが一般的です。敦煌の壁画には、舞を舞ったり、音楽を奏でる姿も描かれています。

迦陵頻伽が見られる場所

迦陵頻伽の美しい姿は、日本各地の寺院や文化施設で見ることができます。

• - 大徳寺（京都）： 千利休が建立した金毛閣に、長谷川等伯によって描かれた迦陵頻伽図があります。その繊細な筆致は見る者を魅了します。
• - 水澤観音（群馬県）： 本堂正面右側の天井画に、凶暴な鷲の爪を持った天女のような姿で描かれています。
• - 萬松園（岐阜県）： 川上貞奴が晩年に建てた別荘の仏間天井には、艶やかな迦陵頻伽が描かれています。
• - 東福寺（京都）： 三門楼上の天井図に、迦陵頻伽を見ることができます。
• - 知恩院、妙心寺（京都）： 三門楼上の天井画に描かれていますが、通常は非公開です。
• - 妙音寺（神奈川県）： 秀逸な石仏の迦陵頻伽を見ることができます。
• - 専念寺（大阪府）： 日本一綺麗と言われる迦陵頻伽を見ることができます。

その他

• - 迦陵嚬伽岡（岩手県）： 迦陵頻伽が老松で翼を休めていたという伝説が残る丘です。
• - 迦陵頻（舞楽）： 迦陵頻伽の舞を表現した舞楽で、胡蝶と対で舞われます。
• - 切手: 1960年代から1970年代にかけて発行された切手の図案に、中尊寺金色堂の華鬘に描かれた迦陵頻伽が採用されました。その美しさは、多くの人に親しまれています。

迦陵頻伽が持つ意味

迦陵頻伽は、その美しい姿と声で、仏教における理想的な世界を象徴しています。浄土の荘厳さを表現するとともに、仏の教えを称える存在として、古くから人々に愛されてきました。その姿は、美術作品だけでなく、文化的な象徴としても、今もなお多くの人々の心を惹きつけています。

関連項目

• - 中尊寺金色堂

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