追捕

追捕（ついぶ/ついふく）

追捕とは、犯罪者や他の逃亡者を追いかけ、捕まえる行為を示す言葉です。この表現は、日本の律令法に起源を持ち、単なる犯罪者の捕縛だけでなく、防人や軍団、さらには仕丁が任務を放棄して逃げた場合や、流罪に処された者がその定められた場所から逃げ出した場合にも適用されます。つまり、当時の法律は逃亡者の捕縛に関して広範な意味を持っていたのです。

国衙が逃亡事例を報告すると、朝廷はその状況に対応するために太政官符（追捕官符）を国衙に発令しました。この太政官符は、逃亡者を捕まえるために国内の武勇を集結させるものであり、実行部隊として兵士や武士を派遣しました。これにより、追捕のための組織的な取り組みが始まったのです。

931年ごろ、特に海賊を対象とした追捕専任の令外官「追捕海賊使」という役職が設けられました。これに続く承平天慶の乱では、さらに多くの追捕使が派遣され、10世紀中期には日本各地に追捕使が設置され、朝廷の命令に基づいて逃亡者を捕まえる役割を担うようになりました。

追捕の対象となった者は、一般に罰として財産の没収処分を受けることが多くありました。特に12世紀以降には、これらの没官行為自体も追捕の一環として認識されるようになりました。さらに、荘園が増加する中で、年貢や公事を未進行とみなされる行為についても、荘園の領主が未進者の財産を強制的に没収することを追捕と称するようになりました。

しかし、鎌倉時代に入ると、荘園内の権利関係が複雑化し、所有権を巡る争いが頻発しました。このような中、ある当事者が自己の職務権限を利用して対立する者や、その肝心の私有財産の追捕を行うことがありました。追捕を行った側は自らの行動を正当化することができた一方で、対立する陣営からは「強盗」「略奪」「狼藉」と非難され、法的な訴訟に発展する事例も増加しました。これにより、追捕という言葉は単なる逃亡者の捕獲を超えて、時には不当な行為として解釈されることに繋がっていったのです。

このように、追捕の歴史は単なる犯罪者の捕縛に留まらず、さまざまな社会的・法的な背景を有していることを示しています。日本の法制度の成り立ちと、その複雑なバックグラウンドを理解する上で、追捕という概念は重要な役割を果たしているのです。

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