速水太郎

速水太郎：鉄道・電力事業に尽力した実業家

速水太郎（はやみ たろう）は、文久2年4月2日（1862年4月30日）に生まれ、昭和11年（1936年）12月31日に没した、日本の実業家です。彼は、関西地方と中国地方を中心に、鉄道事業と電力事業の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと初期のキャリア

速水太郎は、伊賀国上野忍町（現在の三重県伊賀市）で、藤堂藩士の家に生まれました。幼少の頃から学業に秀でており、13歳で郷学校の教師代理を務めるほどでした。京都府英学校（後の京都中学校）を首席で卒業後、神戸駅逓出張局（後の神戸郵便局）に勤務し、卓越した英語力を活かして外事課で活躍しました。その後、海外貿易を扱う速水貿易商会を設立しますが、不運にも商会は倒産してしまいます。

鉄道事業への貢献

1890年（明治23年）、速水は山陽鉄道に入社し、中上川彦次郎社長の秘書を務めます。その際、英語力と鉄道に関する深い知識が評価され、鉄道建設に貢献しました。南清から鉄道土木技術を学び、1896年（明治29年）には、南清と村上享一が設立した鉄道工務所の運営を引き継ぎました。また、帝国鉄道協会の理事も務めました。

阪鶴鉄道での活躍

1896年（明治29年）に阪鶴鉄道へ移籍し、庶務係長として入社。松茸狩列車を企画し成功させました。由良川に鉄製聯絡船を運行させ、太平洋岸と日本海岸の連絡輸送を実現するなど、その手腕を発揮しました。1904年（明治37年）には取締役支配人に昇進し、鉄道国有法公布の際には、政府との交渉役を務めました。

箕面有馬電気軌道と大阪電気軌道

阪鶴鉄道の既得特許を活かして設立された箕面有馬電気軌道（現阪急阪神ホールディングス）では、発起人、創立委員、監査役、取締役を歴任し、小林一三専務取締役から路線建設工事を一任されました。また、大阪電気軌道（現近畿日本鉄道）では、取締役として難工事であった生駒トンネルを含む大阪奈良間全線の工事総監督を務めました。

電力事業への進出

速水は、電力事業にも積極的に関わりました。播磨水力電気の社長、両備水電の取締役を経て、両社が合併して設立された山陽中央水電の社長に就任。今津発電の社長も務めました。

山陽中央水電の社長として

播磨水力電気、両備水電の合併に尽力し、山陽中央水電を設立。その後も、赤穂電燈、牛窓電気、西大寺電燈、吉井川電力などを合併し、事業を拡大しました。帝釈川発電所の竣工にも尽力し、中国合同電気の株式を買収するなど、中国地方の電力事業の発展に大きく貢献しました。

関門架橋への情熱

速水は、鉄道事業の発展に尽力する傍ら、関門海峡への架橋という壮大な構想を抱いていました。1910年（明治43年）に『関門架橋論』を発表し、渋沢栄一らと共に、関門架橋株式会社を設立しようとしましたが、実現には至りませんでした。しかし、彼の情熱は、後の関門トンネル建設へと繋がっていきます。

晩年と死

1936年（昭和11年）12月21日、山陽中央水電の社長として帝釈川発電所を巡視した帰途に倒れ、同年12月31日に死去しました。彼の功績を称え、山陽中央水電によって社葬が執り行われました。

速水太郎は、その卓越した才能と情熱を持って、鉄道と電力という日本の近代化に不可欠な事業の発展に大きく貢献した人物として、その名は永く記憶されることでしょう。

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