造山古墳
造山古墳：古代吉備の巨大な前方後円墳
岡山県岡山市北区に位置する造山古墳は、5世紀前半に築造されたとされる、全長約350メートルにも及ぶ巨大な前方後円墳です。この古墳は、岡山県内では最大規模を誇り、全国的に見ても4番目の大きさを誇ります。特に、墳丘に立ち入ることができる古墳としては国内最大級であり、その雄大な姿は訪れる人々を圧倒します。古墳周辺は吉備路風土記の丘県立自然公園として整備されており、歴史と自然が調和した空間が広がっています。
立地と構造
足守川右岸の丘陵を切り開いて築かれたこの古墳は、3段に築かれた墳丘が特徴的です。前方部の頂は壇状に高まっており、後円部と比較してその割合が大きいことも特徴です。古墳の周囲には、榊山古墳や千足装飾古墳など、6基の陪塚が存在します。しかし、現在に至るまで本格的な学術調査は行われておらず、内部は未発掘のままとなっています。墳丘上には円筒埴輪列が巡らされていた痕跡がありますが、地表に埴輪片はほとんど残っていません。
墳丘の詳細
規模
- - 墳丘長：約350メートル
- - 後円部：復元直径約190メートル、高さ約29メートル
- - 前方部：幅約215メートル、高さ約25メートル
前方部は一部が破壊されており、その跡地には荒神社が建てられています。神社の手水鉢は、阿蘇凝灰岩製の長持型石棺の一部であり、古墳の歴史を物語る貴重な遺物です。また、前方部頂上には祭祀に使用されたとみられる台形壇が存在していたと考えられています。
後円部
後円部には、かつて隆起斜道や掘割墓道があったと推定されていますが、中世末期に城砦として利用された際に大きく改変されたと考えられています。後円部の頂上は平坦で、斜面の傾斜が急になっているのが特徴です。これは、禁忌や畏忌の思想と関連していると考えられています。後円部からは、形象埴輪や円筒埴輪が多数採集されており、墳丘には葺石が施されていたことがわかっています。平坦部は、安土桃山時代に毛利氏が陣地を築いた際に造成されたものです。
造出・周濠
造出は、左右対称に存在していたと推定されていますが、現在は左造出のみが残っています。周濠については、長らく存在が議論されていましたが、2010年の調査でその存在が確認されました。幅約20メートルと推定されています。また、葺石の一部も確認されています。
陪塚について
造山古墳の周囲には6基の陪塚が存在しますが、千足古墳など一部の古墳は、造山古墳とは築造時期が異なると考えられています。特に、千足古墳から出土した須恵器などから、これらの陪塚が必ずしも造山古墳の陪塚とは限らないという見解も出ています。
築造時期
古墳の形状や出土した埴輪の年代などから、造山古墳は5世紀前半に築造されたと考えられています。近隣の中山茶臼山[[古墳]]が、記紀に登場する吉備津彦の陵墓とされる一方で、造山古墳はそれ以降に築造されたと推定されています。
被葬者
古墳の被葬者については、文献記録がないため不明です。しかし、その規模から、ヤマト王権に匹敵する勢力を持つ首長の墓であるという説や、ヤマト王権と連合した倭王の墓であるという説など、様々な見解があります。足守川流域には多くの遺跡や古墳が点在しており、この地域を支配した有力者の墓である可能性が高いと考えられています。
文化財としての現状
造山古墳は、前方部に神社が建てられたり、後円部が改変されたりするなど、築造当時の姿から変貌を遂げています。2009年からは、岡山大学の調査チームによって、周濠の確認や築造年代の特定を目的とした発掘調査が実施されています。陪塚の一つである千足古墳では、石障の呪術文様の剥落が確認され、石障の取り外し保存の方針が決定されています。2015年からは、墳丘周辺部での発掘調査が継続されています。
まとめ
造山古墳は、古代吉備の勢力を示す貴重な遺跡であり、その壮大な規模と未解明の部分が、多くの研究者や歴史ファンを惹きつけています。古墳を訪れる際には、その歴史的背景を理解し、古代のロマンを感じてみてください。
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