進脩館

進脩館について

進脩館は、江戸時代に中津藩によって設立された藩校です。1796年（寛政8年）、藩主の奥平昌高が、藩士の教育のために創設しました。学校は、現在の中津市片端町に位置していました。

開校当初、教授には倉成龍渚と野本雪巌が任命され、総裁役の家老や用人など、30名以上の職員が運営に携わっていました。1812年（文化9年）には校舎が増築され、1827年（文政10年）には寄宿舎が設けられました。1843年（天保14年）には寄宿舎が増築され、「晩香舎」と名付けられました。

進脩館では、上士の子弟は必ず入学することとされ、それ以外の階層の子弟は志願することで入学が許可されました。後に、町人の子弟も受け入れられるようになりました。入学年齢は7、8歳で、生徒数は200名から300名程度でした。入学時には、入学金と謝礼として藩札が納められました。

教育内容は、国学、漢学、洋学、漢洋医学、筆道、算術、兵学、弓術、馬術、剣術、槍術、砲術、抜合、遊泳、柔術の15科目に及び、文武両道を重視していました。

小幡篤次郎と福澤諭吉

進脩館の門下生の中には、後に慶應義塾の設立に深く関わる人物もいました。その一人が、家禄二百石取りの上士、小幡篤次郎です。小幡は16歳で進脩館に入学し、その後、福澤諭吉に見出されて慶應義塾に入塾しました。

下士の出身である福澤諭吉は、二度目の洋行後に、自身の片腕となる人物を求めて中津へ赴き、そこで小幡兄弟を見出しました。小幡篤次郎は福澤を補佐し、慶應義塾の運営と教育に尽力しました。また、藩主の奥平昌邁も福澤諭吉の思想に共鳴し、「中津市学校」を開設、小幡を校長に任命しました。その後、中津藩のほぼ全ての藩士が慶應義塾に移籍しました。

進脩館と慶應義塾は、資本関係などで直接的な繋がりはありませんが、慶應義塾初期の体制を構築する上で重要な役割を果たしたことから、慶應義塾の源流の一つと見なされることもあります。

その他の門下生

進脩館からは、他にも多くの優秀な人材が輩出されました。

渡邊重名：国学者、本居宣長の門下生
渡辺重石丸：国学者
奥平昌高：蘭学者、藩主
小幡篤次郎：慶應義塾長
浜野定四郎：慶應義塾長
中上川彦次郎：時事新報主筆、山陽鉄道創設、三井銀行理事
朝吹英二：国学者
和田豊治：貴族院議員、村上田長書生、甲斐商店勤務、富士紡績社長
小幡英之助：日本最初の歯科医
白石照山：儒学者
磯村豊太郎：北海道炭礦汽船社長
増田宗太郎：国学者
横田国臣：男爵、大審院長
伊東茂右衛門：時事新報主筆
須田辰次郎：福岡師範学校長、佐賀師範学校長、神奈川師範学校長、岩手師範学校長
三輪光五郎：恵比寿ビール支配人
* 津田興二：玉川電気鉄道社長

これらの人物は、それぞれの分野で活躍し、日本の近代化に貢献しました。

まとめ

進脩館は、中津藩における教育の中心的な役割を果たしただけでなく、日本の近代化を支える人材育成に大きく貢献しました。特に、慶應義塾との繋がりは、日本の教育史においても重要な意味を持っています。

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