遊佐長教

遊佐長教：河内を舞台に激動の戦国を駆け抜けた武将

遊佐長教（ゆざ ながのり）は、戦国時代の武将であり、尾州畠山氏の家臣として河内国の守護代を務めた人物です。彼の生涯は、畠山氏の家督争いや、細川氏、三好氏といった有力勢力との複雑な関係の中で、激動の時代を生き抜いた姿を描いています。

遊佐氏の出自と家系

遊佐氏は、出羽国飽海郡遊佐郷を発祥とし、藤原秀郷の末流と伝えられています。鎌倉時代から畠山氏に仕え、南北朝時代には畠山国清の執事として活躍した遊佐国重という人物もいました。1382年に畠山基国が河内守護に就任して以降、遊佐氏は代々河内守護代を務めるようになりました。畠山氏が義就流と政長流に分裂すると、遊佐氏も二派に分かれ、長教は政長流畠山氏に仕えることになります。また、別流として義就流畠山氏に仕えた家や、能登畠山氏、陸奥二本松畠山氏に仕えた家もあります。

生涯：畠山氏の家督争いと長教の台頭

長教は、畠山尚順に仕えた河内守護代・遊佐順盛の子として生まれました。正確な生年は不明ですが、1536年に本願寺との間でやり取りが確認されることから、当時まだ若年であったと考えられています。小谷利明は、長教が大永2年（1522年）生まれの三好長慶とほぼ同世代であり、父・順盛の晩年の子である可能性を示唆しています。

1532年頃から細川晴元と本願寺の対立が激化する中、長教は細川晴元に味方します。しかし、主君である畠山稙長が本願寺方についたため、1534年に長教は稙長の弟である長経を擁立します。この動きには、義就流畠山氏の実力者である木沢長政が関与していたとも言われています。その後、長経は失脚し、1536年には稙長の別の弟である晴熙が擁立されます。この晴熙の擁立には、長教の妻が関わっており、彼女は木沢長政の縁者であったと推測されています。しかし、晴熙の家督継承は幕府に認められず、1538年には畠山晴満が政長流畠山氏の家督を継承しました。この間、長教が支える政長流畠山氏と木沢長政の義就流畠山氏は和睦を図っていたとみられています。

稙長の復帰と木沢長政との戦い

1541年、木沢長政が細川晴元と対立すると、長教は1542年に木沢長政の弟や親族を殺害し、旧主・畠山稙長を迎え入れる準備を整えます。これに対し、幕府から「御敵」とされた畠山晴満は木沢氏の城へと逃れます。長教は三好長慶らの援軍を得て、太平寺の戦いで木沢長政の軍を破り、長政を討ち取ります。この戦いを経て、稙長は河内に復帰し、長教は稙長の意を奉じて文書を発給する立場に戻りました。1544年には、長教は従五位下河内守に補任され、畠山尚順の娘と婚姻しています。

畠山氏の家督問題と細川晴元との戦い

稙長は1545年に死去しますが、その後継者を巡って再び混乱が生じます。能登畠山氏から後継者が迎えられそうになりますが、この話は流れ、長教は稙長の弟である政国を擁立しました。しかし、政国は幕府から家督相続を認められず、「惣領名代」という立場になります。1546年、長教は細川氏綱を擁して挙兵し、堺や芥川城を攻め落としますが、三好実休の軍勢が畿内に上陸し、戦況は悪化します。1547年には舎利寺の戦いで敗北し、高屋城を包囲された後、細川晴元と和睦します。その後、長教は三好長慶と同盟を結び、娘を長慶に嫁がせます。1549年の江口の戦いで、長教は三好長慶とともに細川晴元を破り、細川晴元政権を崩壊させました。

暗殺とその後

1551年、長教は高屋城内で暗殺されました。犯人は京都の法師や時宗の僧であると伝えられています。長教の死は100日間秘匿されました。長教の死後、遊佐氏の家臣である萱振賢継と安見宗房の間で対立が生じ、三好長慶が両者の婚姻をまとめるも、安見宗房が萱振氏らを粛清しました。長慶は萱振賢継が擁立を図った長教の弟を殺害し、長教の後継者には安見宗房が推す遊佐太藤が就きました。

遊佐長教の主な家臣

走井盛秀: 長教の筆頭年寄
田河能忠: 年寄の次席
吉益匡弼: 年寄の末席
斎藤山城守: 重臣で木沢長政と姻戚関係。
萱振賢継: 河内国若江郡萱振を本拠地とする。
鷹山弘頼: 大和国添下郡鷹山荘を本拠地とする。
* 安見宗房: 鷹山弘頼と共に長教の麾下となる。

その他、恩智氏、草部氏、菱木氏、中小路氏、行松氏などが長教の家臣として確認できます。

遊佐長教は、激動の戦国時代において、畠山氏の家督争いに深く関わり、有力武将たちと複雑な関係を築きながらも、自らの立場を守り抜いた人物でした。彼の生涯は、戦国時代の政治情勢や社会構造を理解する上で、非常に重要な事例の一つと言えるでしょう。

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