遠山友禄

遠山友禄（とおやま ともよし）

遠山友禄は、美濃苗木藩の第12代、そして最後の藩主です。文政2年（1819年）に苗木城で生まれ、幼名は三之助。父は第11代藩主の遠山友寿です。友禄は三男でしたが、二人の兄が早世したため、文政11年（1828年）に世子となりました。

天保6年（1835年）に刑部少輔に叙任され、友祥と名乗ります。その後、天保8年（1837年）には豊前守を称し、天保9年（1838年）に父・友寿が亡くなると、天保10年（1839年）に家督を継ぎ、苗木藩主となりました。同時に美濃守に改め、幸橋門番や駿府加番などの役職を歴任しました。

藩主となった友禄が直面したのは、藩財政の深刻な困窮でした。先代の時代から続く財政難を打開するため、家中からの借上げ期間の延長を余儀なくされ、天保13年（1842年）には、苗木城と江戸藩邸の両方の藩士全員の給与を借上げするという非常手段を断行せざるを得ませんでした。嘉永3年（1850年）には、倹約取締令を出し、人員削減、役職の配置転換、兼務の推奨など、徹底した経費削減策を実施しました。

安政7年（1860年）には奏者番に任じられ、信濃守に改めます。文久元年（1861年）には若年寄となり、芝将監橋の上屋敷を幕府に差し出し、新たに辰ノ口の遠藤屋敷を拝領しました。文久2年（1862年）には再び美濃守に改め、生麦事件の際には、幕府の代表として英国代理公使のジョン・ニールに陳謝するという重責を担いました。その後、若年寄を免ぜられ、苗木城へ帰国。

文久3年（1863年）には、大坂警衛を命じられ、14代将軍徳川家茂に随伴して第二次長州征伐に参加しました。慶応2年（1866年）には、大坂城で急死した徳川家茂の遺体を奉じて江戸へ護送し、その葬儀にも深く関わっています。

慶応3年（1867年）に若年寄を再び免ぜられ、友祥から友禄に改名、再び美濃守を称します。この頃には大政奉還がなされ、時代は大きく変革期を迎えます。鳥羽・伏見の戦いを経て、友禄は江戸藩邸に来た家臣たちの説得を受け、新政府に恭順の意を示しました。苗木に帰国後、東山道鎮撫の岩倉具視に勤王の意思を表明し、新政府軍に合流します。

戊辰戦争では、尾張藩主の徳川慶勝に従い信濃善光寺へ出兵、後に甲府城を守備しました。戦後、藩政刷新に着手し、諸士の階級と役高を定めました。明治2年（1869年）には職制改革を行い、版籍奉還を請願、知藩事となります。飛騨で発生した梅村騒動の鎮圧にも尽力しました。

明治維新後の苗木藩では、平田国学の影響を受け、青山景通・直通父子を重用し、藩政改革を進めました。しかし、旧士族の帰農や家禄奉還といった過酷な政策は、後年、藩内で大きな騒動を引き起こす要因となります。また、友禄自身も臨済宗から神道に宗旨替えを行い、平田国学に入門しました。明治3年（1870年）には、藩内の寺院を破却する廃仏毀釈を強行しています。

明治4年（1871年）の廃藩置県によって苗木藩は苗木県となり、後に岐阜県に吸収され消滅。友禄は華族（子爵）として東京へ移住しました。明治7年（1875年）に隠居し、養子の友悌に家督を譲りました。晩年は旧藩士の救済に尽力し、明治28年（1894年）に東京で亡くなりました。享年76歳。その葬儀は神葬によって行われ、墓所は岐阜県中津川市苗木にあります。

遠山友禄は、激動の時代を生き抜いた藩主として、その生涯は、幕末から明治維新にかけての変革期における藩主の苦悩と決断を映し出しています。参考文献として、『遠山友禄公記』や『苗木藩終末記』などが挙げられます。

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