邨岡良弼

邨岡良弼（むらおか りょうすけ）

邨岡良弼は、弘化2年（1845年）に下総国に生まれ、明治時代に法制官僚、法制史学者、歴史学者として活躍した人物です。幼名は五郎、字は賚卿、号は櫟斎と称しました。旧姓は渋谷氏で、本姓は平氏です。正七位に叙せられています。

生涯

幼少期から学問に励み、昌平坂学問所や箕作麟祥の私塾で学びました。特に和漢の律令法制やフランス法に精通し、その知識は後の法典編纂に大きく貢献しました。

明治初期には、刑部省で新律綱領の策定に携わり、司法省明法寮では修志局長として『刑法沿革志』を編纂しました。また、改定律例編修にも関わるなど、日本の近代法整備に大きく貢献しました。長崎裁判所の法官を務めた際には、国学者池原日南に和歌や和文を学び、音楽にも造詣が深かったと伝えられています。

その後、太政官法制部や参事院法制部を経て、岩倉具視が設置した国史編修局では『大政紀要』の編纂に参画しました。また、内閣記録局長として『法規分類大全』編纂を主導するなど、法制官僚として重要な役割を果たしました。明治25年（1892年）に官職を退いた後は、著述活動に専念しました。徳川光圀の『大日本史』の纂訂や、宮内省の六国史校訂など、歴史学者としても大きな功績を残しました。

大正6年（1917年）に東京で亡くなり、染井霊園に葬られました。

官歴

邨岡良弼は、以下の官職を歴任しました。

明治2年11月：刑部少録
明治4年8月：司法中録
明治4年9月：明法権少法官
明治5年2月：明法中属
明治5年8月：明法権少法官
明治7年1月：長崎裁判所法官
明治7年5月：長崎裁判所二級判事補
明治8年5月：司法権大解部
明治8年12月：司法権大録
明治9年7月：司法大録
明治10年1月：司法省二等属
明治12年3月：太政官一等属
明治14年10月：参事院書記生
明治14年12月：参事院御用掛
明治16年2月：参事院議官補、正七位
明治16年4月：参事院議官補兼宮内省御用掛
明治17年2月：参事院議官補兼図書寮御用掛
明治19年1月：内閣属
明治19年5月：内閣属判任一等、内閣記録課長
明治25年6月：辞任
明治45年1月：宮内省六国史校訂材料取調掛
大正3年12月：辞任

著作

邨岡良弼は、法制、歴史、地理、紀行、詩歌など、多岐にわたる分野で多数の著作を残しました。主な著作は以下の通りです。

『続日本後紀纂詁』
『文徳実録纂詁』
『日本書紀定本』
『日本地理志料』
『法制志』
『刑法沿革図解』
『楽器考証』
『渋谷譜略』
『北総詩史』
『房総游乗』
『千葉日記』
『甲信紀程』
『豆山臥遊詩』
『介寿録』
『鐘情集』
『国郡捷見』
『総州文書纂』
『北総人物志』
『地理賸語』
『詹々小言』
『櫟斎偶筆』
『赤檮舎叢書』
『櫟斎文存』
『赤檮の落葉』
『良弼詩藻』

人物

小柄で痩身であったが、癇癪持ちな一面があり、家族からは畏れられていたという逸話が残っています。同じく癇癪持ちであった井上毅の下で勤めた際には、出張時に面白い逸話が残っていたとされています。

家族

妻の禧子は、江戸幕府奥詰銃隊の田中重威の娘で、明治5年に結婚しました。娘の倭文は20歳未満で亡くなり、長男の美麻は大学在学中に亡くなりました。次男の安は大日本帝国陸軍歩兵大尉を務め、三男の良臣は掌典を務め、邨岡家から分家しています。

脚注

『新撰大人名辞典 第六卷』平凡社、1942年
沢田総清 (1930). “邨岡良弼先生の事ども”. 國學院雑誌 第46巻 (12号)
「櫟斎村岡良弼先生逝去」『歴史地理』第29巻第2号彙報、1917年

邨岡良弼は、法制官僚、法制史学者、歴史学者として、日本の近代化に大きく貢献した人物です。その業績は多岐にわたり、後世に大きな影響を与えています。

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