郎官

郎官とは

郎官（ろうかん）は、中国の古代において皇帝の近くで仕官していた一群の官職を指します。この職業は、しばしば郎（ろう）や郎吏（ろうり）とも称され、高官への出発点として非常に重要な役割を果たしていました。

歴史的背景

郎官という地位の起源は秦代に遡り、その後、前漢時代にも継承されました。秦の制度のもとでは、郎中令という官職に属していました。「郎」という語は元々「廊」の意であり、宮殿の回廊に控える者を指すとの説が存在します。

前漢時代

前漢では、郎官は依然として重要な地位を占め、定数はその時期によって変動しましたが、最大で千人に達することもありました。彼らの主な職務には、宮殿内の掖門を守衛し、皇帝の外出時には護衛をすることが含まれていました。この掖門は常に警備されるべき脇門であり、正門は衛尉という官職に属する兵士が担当していました。

郎官の地位は、議郎、中郎、侍郎、郎中に分かれ、高い地位にいる者がより多くの責任を負うという形態がありました。彼らは、秩石と呼ばれる官位の序列に従っており、地位によって比六百石から比三百石に分かれていました。特に中郎は、三名の中郎将（五官中郎将、左中郎将、右中郎将）が指揮し、郎中もまた三名の郎中将が統括しました。

このような制度は、特に才能に恵まれた者、地方から孝廉として推薦された者、あるいは親が高官であるために任官された者、また金銭を寄付して売官された者にとって、官職に就くための重要なステップとなっていました。郎官は人材プールとしての役割を果たし、優れた家柄や才能を有する若者たちにとって昇進の可能性を広げる出発点でもあったため、「郎」という語には若い貴族や俊才という意味合いが込められるようになりました。

後漢以降

後の時代になると、軍事が重要視されることが少なくなり、郎官は護衛としての役割から文官としての職務が強くなりました。魏・晋時代には、秘書郎、著作郎、黄門郎といった郎官が登場し、隋・唐時代では朝議郎や通直郎といった新たな職務が確立されました。

もともと郎官として位置付けられていた侍郎は、後には尚書の補佐を行う役職に変化し、郎中や員外郎などの司官も誕生しました。このように、時代の変遷に伴い、郎官の役割や意義も変化していきました。

参考文献

• - 班固著、『漢書』
• - 小竹武夫訳『漢書』1から8、筑摩書房、1998年。
• - 大庭脩監修、漢書百官公卿表研究会『『漢書』百官公卿表訳注』、朋友書店、2014年。
• - 福永善隆「前漢における内朝の形成 : 郎官・大夫の変遷を中心として」『史学雑誌』第120巻第8号、2011年。

外部リンク

• - 中央研究院・歴史語言研究所「漢籍電子文献資料庫」

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