難升米

難升米（なしめ／なんしょうめ／なんしょうまい）とは

難升米は、3世紀の日本列島に存在したとされる邪馬台国の人物で、卑弥呼に仕えた大夫です。その名前は『三国志』魏書東夷伝倭人条、いわゆる「魏志倭人伝」に登場し、当時の日本と中国大陸との外交関係を知る上で非常に重要な人物として知られています。別名として難斗米（なとめ）とも呼ばれます。

魏への使節としての活動

239年、難升米は卑弥呼の使者として、次使の都市牛利とともに魏へ派遣されました。彼らは帯方郡を経由して魏の都に到着し、皇帝への拝謁を求めています。その際、男の生口4人と女の生口6人、そして班布2匹2丈を献上しました。

難升米の尽力により、魏の皇帝は卑弥呼を「親魏倭王」に任じ、金印紫綬を授与しました。また、難升米自身も、その功績から率善中郎将という官位と銀印青綬を与えられ、都市牛利も率善校尉に任じられました。さらに、魏からは献上物の返礼として、絳地交龍の錦や織物、絹、金、刀、銅鏡など、莫大な下賜品が贈られました。この事実は、当時の朝貢外交が単なる形式的なものではなく、莫大な経済的利益をもたらすものであったことを示唆しています。

245年には、難升米は魏から黄幢を授けられています。この黄幢は、後に邪馬台国と狗奴国との和平交渉のために派遣された張政によって難升米に手渡されました。

難升米の人物像

難升米は、魏との外交交渉において重要な役割を果たし、邪馬台国に有利な条件を引き出すことに成功しました。彼の外交手腕は、当時の日本が国際社会で存在感を示し、独自の立場を築いていく上で大きな貢献をしたと考えられます。

また、彼の名前は、後世の研究者たちによって様々な解釈が試みられています。その中でも、京都大学教授であった内藤湖南は、難升米を垂仁朝に常世の国へ派遣され、景行朝に帰国したとされる田道間守と同一人物であるという説を唱えました。これはあくまで一説ですが、彼の存在が古代史研究において、重要な鍵を握っていることを示唆しています。

難升米に関する研究資料

難升米に関する研究は、古代史研究の中でも重要な分野の一つであり、多くの研究者によって様々な角度から議論されています。

代表的な資料としては、以下のものがあります。

『新訂魏志倭人伝』岩波文庫: 魏志倭人伝の原文と現代語訳、詳細な注釈が掲載されており、研究の基礎となる資料です。
『日本の古代1』中央公論社: 古代日本の社会や文化に関する総合的な研究書で、難升米が登場する時代の社会情勢について詳しく解説しています。
* 『周縁の三国志　非漢族にとっての三国時代』東方書店: 周辺民族から見た三国志の歴史を考察しており、難升米の視点から当時の国際関係を理解する上で参考になります。

これらの文献や研究を通じて、難升米が当時の東アジアの国際関係の中でいかに重要な役割を担っていたかを理解することができます。

まとめ

難升米は、3世紀の邪馬台国において、魏との外交を成功に導いた重要な人物です。彼の活動は、当時の日本の外交史を理解する上で欠かせない要素であり、その存在は古代史研究において重要な意味を持っています。

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