重友毅

重友毅：近世日本文学研究の巨匠

重友毅(しげとも き、1899年12月25日-1978年8月11日)は、20世紀を代表する日本国文学者の一人です。山口県萩市出身の彼は、近世日本文学、とりわけ上田秋成を中心とした研究で知られています。その業績は、上田秋成研究における第一人者としての地位を確立するものであり、日本近世文学研究に多大な貢献を果たしました。

早稲田大学予科を中退後、第一高等学校を経て、1924年に東京帝国大学文学部国文科を卒業。その後、旅順工科大学予科教授、東京体育専門学校教授、武蔵高等学校教授などを歴任しました。1949年には武蔵大学と法政大学の教授を兼任し、1952年には東京大学より「雨月物語の研究」で文学博士号を取得。この研究は、彼の学問的基盤を築き、その後の研究活動の礎となりました。

1956年には武蔵大学を辞任し、法政大学に専任。法政大学では文学部長も務め、1966年に定年退職するまで、多くの学生を指導しました。退職後も、広島女学院大学教授として教壇に立ち続け、後進の育成にも尽力しました。

彼の研究は多岐に渡り、上田秋成のみならず、近松門左衛門、井原西鶴といった近世を代表する作家たちの作品を深く掘り下げました。緻密な考証と独自の解釈に基づく研究成果は、多くの著書や論文に結実しています。代表的な著作としては、『雨月物語の研究』、『近世国文学考説』、『近松の人間愛』、『日本近世文学史』などがあり、いずれも日本の近世文学研究において重要な位置を占めています。5巻に及ぶ『重友毅著作集』は、彼の生涯の研究成果をまとめたもので、近世文学研究者にとって必携の書となっています。

また、重友毅は多くの古典作品の校訂にも携わりました。上田秋成の『胆大小心録』や『春雨物話・くせ物話』の岩波文庫版をはじめ、様々な古典作品を現代に甦らせる仕事を通じて、日本の古典文学の普及にも貢献しました。

彼の没後も、その業績は高く評価され続けています。多くの研究者たちが彼の著作を参照し、その研究を継承しています。重友毅は、単なる学者ではなく、日本の近世文学研究に大きな足跡を残した、まさに巨匠と言えるでしょう。その功績は、今後も日本の文学研究において重要な位置を占め続けることでしょう。

主な著書

『近世国文学考説』(積文館、1933)
『近松』(日本評論社、1939)
『江戸の町人文学』(日本放送出版協会、1940)
『秋成』(日本評論社、1943)
『近世文学の位相 古典による自覚と反省』(日本評論社、1944)
『雨月物語の研究』(大八洲出版、1946)
『近松の人間愛』(生活社、1946)
『日本文学論攷 古典と現代』(昭森社、1949)
『日本近世文学史』(岩波書店、1952)
『雨月物語評釈』(明治書院、1954)
『日本近世文学 展望と考察』(みすず書房、1954)
『雨月物語』(弘文堂、1956)
『近世文学史の諸問題』(明治書院、1963)
『重友毅著作集』(全5巻、文理書院、1970-1974)
『志賀直哉研究』(笠間書院、1979)

校訂など

上田秋成『胆大小心録』(岩波文庫)
上田秋成『春雨物話・くせ物話』(岩波文庫)
『近松の人々』(編、紫乃故郷舎)
『上田秋成集』(日本古典全書、朝日新聞社)
『近松浄瑠璃集　上』(日本古典文学大系、岩波書店)
* 『濹東綺譚の世界』(高橋俊夫共編著、笠間書院)

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