野口恭

野口恭（のぐち きょう）

日本のプロボクサーであり、元日本フライ級王者。また、野口ボクシングジムの名誉会長も務めた。1939年6月14日、愛媛県に生まれる。父は野口ボクシングジムを創設したプロボクサー、ライオン野口。キックボクシングの創始者として知られる野口修は兄にあたる。野口自身の家族もボクシングに深く関わっており、長女はジムマネージャー、長男は3代目会長を務めている。

プロボクサーとしての軌跡

野口恭は、1955年6月14日、自身の16歳の誕生日にプロボクサーとしてのキャリアをスタートさせた。

プロ入り後、日本フライ級のトップ戦線で活躍する。1959年9月29日、日本フライ級王座決定戦で福本篤人と対戦するも、判定負けを喫し、この時は惜しくも王座獲得を逃した。

さらに、1960年11月25日には、OBF東洋フライ級チャンピオンであった矢尾板貞雄に挑戦した。矢尾板選手とは過去1敗1分と対戦しており、この試合は両者にとって決着戦となるラバーマッチであったが、ここでも判定で敗れ、東洋タイトル獲得はならなかった。

しかし、粘り強く頂点を目指し続けた野口は、1961年4月28日、日本フライ級王者となっていた福本篤人との再戦の機会を得る。この注目のリターンマッチを判定で制し、見事、悲願の日本王座を獲得した。これは、父であるライオン野口も元日本ウェルター級王者であったことから、日本のプロボクシング史上初となる「親子二代での日本王者」という歴史的な快挙達成でもあった。

初防衛戦は、王座獲得からわずか4ヶ月後の1961年8月25日に行われた。再び挑戦者に福本篤人を迎え撃ち、この3度目の対戦も判定で勝利を収め、初防衛に成功した。

日本王者として評価を高めた野口は、1962年5月30日、世界フライ級チャンピオンのポーン・キングピッチに挑戦する機会を得た。日本人として世界の舞台に挑んだが、ポーン・キングピッチの前に大差の判定で敗れ、世界王座獲得はならなかった。

世界挑戦からの再起を図る中、1962年12月28日には日本フライ級王座の2度目の防衛戦を迎えた。挑戦者は斎藤清作（後のタレント・たこ八郎）であった。この試合で判定負けを喫し、日本王座から陥落することとなった。

翌1963年5月17日、再び日本王座返り咲きを目指し、王者となっていた斎藤清作との再戦に臨んだ。しかし、この試合も判定負けに終わり、王座奪還は叶わなかった。この試合を最後に、プロボクサーとしての現役生活にピリオットを打った。

引退後の活動と家族

現役引退直後の1963年5月30日に結婚。その後、父が創設した野口ボクシングジムの運営に携わり、1972年には2代目会長に就任した。

ボクシング一家の伝統は次の世代にも受け継がれた。1980年5月16日には、野口恭の長男である野口勝がプロデビューを果たした。勝は、ライオン野口、野口恭に続く「親子孫3代での日本王者」という目標を掲げていた。しかし、網膜剥離という不運に見舞われ、タイトル挑戦の機会を得ることなく、プロ戦績5戦3勝（1KO）2敗で現役を退かざるを得なくなった。これにより、親子孫3代王者への挑戦は達成されなかった。

ジム会長として、野口は選手の育成に尽力した。1999年には、一度引退してK-1に参戦していた吉野弘幸をジムに迎え入れ、日本ボクシングコミッション（JBC）へのボクサーライセンス再発行を実現させるなど、選手のキャリア継続を支援する活動も行った。

晩年

野口恭は、2009年1月1日午前2時21分、東京都足立区の自宅にて、心不全のため死去した。享年69歳であった。

ボクサーとして日本王座を獲得し、日本のプロボクシング史に「親子二代王者」として名を刻んだ野口恭は、引退後もジム会長として後進の指導にあたり、ボクシング界の発展に貢献した生涯を送った。

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