野川 (川崎市)

野川（のがわ）

野川は、神奈川県川崎市高津区と宮前区に跨る地域です。かつては大字野川として存在していましたが、住居表示の実施に伴い、現在は複数の町名に分割されています。

地理

野川は、広大な台地を中心とした地域で、平地は矢上川や有馬川といった鶴見川の支流の流域近辺に限られています。かつては台地、平野問わず農業が盛んでしたが、近年は宅地開発が急速に進んでいます。特に東急野川団地をはじめとするマンション建設が増加し、川崎市内でも有数のベッドタウンとなっています。大小の公園や自然も多く残されていますが、人口増加に対し商業施設の整備が追いついておらず、多くの住民が自家用車やバスで近隣の武蔵小杉、溝口、鷺沼、港北ニュータウンへ買い物に出かける状況です。

地価

2021年1月1日の公示地価によれば、住宅地の地価は野川字西耕地3013番11の地点で19万7000円/m2となっています。

歴史

野川という地名の由来は、矢上川の流れにあると考えられています。南北の丘陵の間を流れる矢上川が「野川」と呼ばれ、それに沿う村という意味で「野川村」となったと推測されています。

1950年代までは古い農村の姿が残っており、低地や谷戸には水田が、台地上には畑作が、そして雑木林は炭林として利用されていました。大正時代には養蚕が盛んでしたが、戦後は養鶏や養豚が主流となりました。1950年頃からは東京急行電鉄（現・東急）による開発が進み、土地買収が活発化し、県営や市営の住宅・団地が建設されていきました。

野川第一土地区画整理事業

東急が推進した多摩田園都市計画において、野川地区は最初に開発を行うモデル地区として選ばれました。東急が比較的まとまった土地を確保していたこと、また、事業面積を19.8haと小さくすることで早期に成果を出す狙いがありました。事業は土地区画整理組合が施行しましたが、東急が組合の業務を代行し、その代行料として保留地を受け取るという方式が取られました。1961年10月の換地処分によって事業は完了し、完成と前後して東急の縁故者向けに分譲が行われたり、社宅が誘致されたりしました。

住居表示の実施

2015年度から住居表示の実施が検討され、2018年度から2020年度にかけて町内全域で実施されました。これにより、野川は以下の町名に分割されました。

高津区側：北野川、東野川
宮前区側：西野川、野川台、野川本町、南野川

沿革

1531年：影向寺十二神将の頭部内墨書銘に「武州野河郷加□谷村住侶」の記述
1559年：『小田原衆所領役帳』に「小机野川」の記載
1590年：徳川家康が江戸入部、野川郷がいくつかの小村に分立
1649年：上野川村が増上寺御霊屋料の村となる
1667年：下野川村が旗本大岡氏の知行所となる
1745年：野川新田が開拓され天領に
1834年：『天保郷帳』に上野川村、下野川村の記述
1868年：明治維新により神奈川県管轄となる
1875年：上野川村・下野川村が合併し野川村となる
1889年：市制町村制施行、野川を含む5村が統合し宮前村が誕生。野川は大字となる
1938年：宮前村が川崎市に編入され、川崎市野川となる
1972年：川崎市が区制施行、高津区野川となる
1982年：高津区から宮前区が分区。第三京浜道路より西側が宮前区に編入
2018年11月5日：第三京浜道路及びその東側で住居表示が実施され、北野川、東野川1・2丁目が新設
2019年10月15日：宮前区野川本町1・2・3丁目、西野川1・2・3丁目が新設
2020年11月9日：宮前区南野川1・2・3丁目、野川台1・2・3丁目が新設。全区域の住居表示が完了

世帯数と人口

2017年12月31日現在の世帯数と人口は、以下の通りです。

(データは省略)

小・中学校の学区

市立小・中学校に通う場合、学区は以下の通りです。高津区側と宮前区側で区別されず共通の学区となります。

(データは省略)

交通

野川地域には旅客用の駅はありませんが、JR武蔵野線の梶ヶ谷貨物ターミナル駅があります。旅客化の案も存在しますが、実現の可能性は低いと見られています。駅舎所在地は、2019年に宮前区梶ケ谷に変更されました。主要道路としては、中原街道、尻手黒川道路が走り、両道路は野川交差点で交差します。また、第三京浜道路が中原街道とほぼ並行して走り、野川インターチェンジの建設が進められています。

バスは武蔵小杉駅、武蔵中原駅、武蔵新城駅、武蔵溝ノ口駅、梶が谷駅、宮前平駅、鷺沼駅から利用可能です。特に武蔵小杉駅、梶が谷駅、鷺沼駅からの便が多く、朝ラッシュ時には混雑が見られます。バス路線は主に台地の下の道路を走るため、台地の上からバス停までの移動が困難な場合があります。2008年からは野川南台団地から中原街道を経由するコミュニティバスが運行されています。

川崎市交通局の計画では、川崎縦貫高速鉄道の久末駅（仮称）を野川交差点付近に、野川駅（仮称）を野川台西側の宮前区休日急患診療所付近に建設する予定がありましたが、現在は計画が凍結されています。

主要施設

北野川

小規模の住宅地。

東野川1丁目

市営野川東住宅
日産プリンス神奈川販売 野川店
Honda Cars 神奈川東 野川店
ケーズデンキ 川崎野川店
フィットケアデポ 野川店
ヤマト運輸 高津千年センター
洋服の青山 川崎野川店

東野川2丁目

市営久末西住宅の一部
野川保育園
フィットケアデポ 川崎久末店
リンガーハット 川崎野川店
吉兆 川崎野川店

野川本町1丁目

フィットケアデポ 上野川店

野川本町2丁目

川崎野川郵便局
オーケー 野川店
ヨークマート 川崎野川店
ガスト 野川店

野川本町3丁目

川崎信用金庫 野川支店
野川神明社
影向寺
たちばなの散歩道

西野川1丁目

市営野川西住宅
FUJI 上野川店（ホームセンターコーナン併設）
宮山スポーツプラザ

西野川2丁目

川崎市消防局宮前消防署野川出張所
川崎市立野川小学校
川崎市立野川中学校
亀ヶ谷学園 宮前幼稚園・宮前おひさまこども園
ティンクル上野川保育園
宮前スイミングスクール
パシオス 野川店（100円ショップダイソー併設）

西野川3丁目

宮前警察署 野川交番（高津区側は高津警察署千年交番の管轄）
セレサ川崎農業協同組合 野川支店
ゲオ 野川店

南野川1丁目

スシロー 川崎野川店
むさしの森珈琲 川崎野川店
クリエイトエス・ディー 川崎野川店

南野川2丁目

川崎市立南野川小学校
クリエイトエス・ディー 川崎南野川店
はま寿司 川崎野川店

南野川3丁目

県営野川南台団地
京浜予防医学研究所
野川南台保育園
ティンクルくぬぎ坂保育園

野川台1丁目

野川こども文化センター

野川台2丁目

野川台3丁目

川崎市立西野川小学校

関連項目

野川 (曖昧さ回避)

脚注

(脚注は省略)

外部リンク

宮前区の地域ポータルサイト「宮前ぽーたろう」

参考文献

「川崎地名辞典（下）」 日本地名研究所編　川崎市発行　2004年
東京急行電鉄「東急多摩田園都市開発50年史」（CD-ROM、2005年）

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