金ヶ作陣屋

金ヶ作陣屋について

金ヶ作陣屋（かねがさくじんや）は、江戸幕府が下総国葛飾郡金ヶ作（現在の千葉県松戸市常盤平陣屋前）に設置した陣屋です。主に小金牧（放牧場）を管轄するために設けられました。

概要

陣屋の正確な設置年代は不明ですが、享保8年（1723年）頃と推定されています。それまで江戸から現地に赴いていた野方代官が、この年から陣屋を活動拠点とした記録が残っています。また、小金牧の牧士の末裔とされる三橋氏の記録にも、享保8年に新しい陣屋が建てられたことが記されています。

陣屋は当初、葛飾郡日暮村の新田内に置かれましたが、享保15年（1729年）の検地によって周辺の御林（幕府の林）と分村することになり、その際、地名から「金ヶ作村」と命名され、陣屋も「金ヶ作陣屋」と呼ばれるようになりました。

陣屋の建設は幕府が行いましたが、修繕費用は周辺の御林から伐採した材木の代金で賄われ、人夫は周辺の天領の住民が動員されました。代官が不在の時は、手代が駐在して職務を代行しました。

陣屋が設置された背景には、将軍徳川吉宗が馬の育成を重視したことや、小金牧の一部を新田開発に充てたことが挙げられます。代官はここで野馬奉行らを指揮して小金牧を管理するほか、支配下の村々の訴訟業務も扱いました。陣屋内には白洲（裁判を行う場所）も設けられ、江戸の公事宿（訴訟を取り扱う場所）2軒が金ヶ作に招かれて訴訟業務に参画しました。

しかし、享保17年（1732年）に代官の不正が発覚し、小金牧一帯が管轄から外されると、陣屋は伊奈氏の支配下となり、代官が出張する際の拠点となりました。幕府は陣屋の廃止を命じましたが、翌年、正式な代官として派遣された疋田泰永が地元住民の意見を聞き、存続を幕府に求めた結果、認められました。

寛政5年（1793年）には、小金牧・佐倉牧・峯岡牧の支配が小納戸頭取に移され、金ヶ作陣屋にも小納戸頭取が派遣した手代らが常駐するようになりました。当時の小納戸頭取であった岩本正倫は、将軍徳川家斉の信任が厚く、それが陣屋の支配に影響したと考えられています。小納戸頭取による金ヶ作陣屋の支配は幕末の元治元年（1864年）まで続き、その後は騎馬奉行などが管轄しましたが、明治維新によって廃止されました。

まとめ

金ヶ作陣屋は、江戸幕府の牧場管理と周辺地域の行政を担った重要な施設でした。その役割は時代とともに変化しましたが、幕府の政策や地域社会の動向を反映する歴史的な場所として、今もその名残を留めています。

参考文献

大谷貞夫『江戸幕府の直営牧』（岩田書院、2009年） ISBN 978-4-87294-590-4
「金ヶ作陣屋考」（初出:『鎌ケ谷市史研究』創刊号（1988年））
「小金牧」（初出:『鎌ケ谷市史』中巻第3編第1章（1997年））
佐々木克哉「金ヶ作陣屋」（『江戸幕府大事典』（吉川弘文館、2009年） ISBN 978-4-642-01452-6）

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