金剛山 (朝鮮)

金剛山（クムガンサン）とは

金剛山は、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の江原道に位置する、太白山脈に属する山です。最高峰は毘盧峰（ピロボン）で、標高は1,638m。古来より朝鮮半島では、白頭山と並び称される名山として知られてきました。

地理的特徴

金剛山は、東西約40km、南北約60kmに広がる広大な地域を指します。その範囲は曖昧な部分もありますが、一般的には、内金剛（ネグムガン）、外金剛（ウェグムガン）、海金剛（ヘグムガン）の3つの地域に区分されます。

内金剛: 最高峰の毘盧峰を含む中央連峰の西側に位置します。
外金剛: 中央連峰の東側に位置し、山岳地帯が広がります。
* 海金剛: 東端の海岸部に位置し、海に面した景観が特徴です。

日本統治時代には、外金剛の南部を新金剛（シングムガン）と呼ぶこともありましたが、現在ではあまり使われていません。北朝鮮や韓国では、さらに細かく22～23の区域に分ける方式も用いられています。

歴史と文化

金剛山は、新羅時代から仏教が盛んで、多くの寺院や石塔、石仏などが建立されました。特に、神渓寺（シンゲサ）、楡岾寺（ユジョムサ）、長安寺（チャンアンサ）、表訓寺（ピョンフンサ）は「金剛山四大寺院」として知られていましたが、朝鮮戦争によって多くの文化財が破壊され、現在では表訓寺のみが現存しています。

北朝鮮時代に入ってからは、金日成・金正日親子を称える文字が岩に刻まれるなど、政治的な側面も強まりました。しかし、2000年代以降は南北の仏教界が協力し、神渓寺が韓国側の支援で再建されるなど、復興の動きも見られます。

自然

金剛山は、多様な植生がみられる場所としても知られています。亜高山帯のニワウルシ属の群落や、針広混交林、広葉樹林、湿地性の草原など、様々な植物が生育しています。ヤマブドウやサルナシ、オオサンザシなどの野生の果物や、オタネニンジンやオケラといった薬用植物も豊富です。2018年にはユネスコの生物圏保護区にも登録されています。

名称の由来

金剛山の名前は、仏教の経典である華厳経から採られたとされています。一万二千峰あるとされる峰の数も、華厳経に由来すると言われています。また、金剛山には、蓬莱山、楓岳山、皆骨山という別名もあり、それぞれ、夏、秋、冬の金剛山を指す言葉として用いられてきました。

李氏朝鮮時代から日本統治時代

19世紀末には、長安寺や神渓寺など45の寺院があったと記録されています。日本統治時代に入ると、鉄道が開通し、外金剛にはスキー場が作られるなど、観光地として発展しました。多くの観光客が訪れ、日本式や朝鮮式の旅館が立ち並びました。国立公園とする運動も起こりましたが、実現には至りませんでした。

韓国からの観光

現代財閥の会長が、北朝鮮との協議を経て、1998年から韓国からの金剛山観光を実現させました。当初は船による観光でしたが、後に陸路観光が開始され、多くの観光客が訪れました。金剛山は、南北分断で離ればなれになった家族の再会事業の場ともなり、南北関係の窓口としての役割も果たしました。

しかし、2006年の北朝鮮のミサイル発射や核実験の影響で、観光事業は一時中断。2008年には、韓国人観光客射殺事件が発生し、観光は全面停止となりました。

現在の状況

2010年、北朝鮮は韓国側の不動産資産を没収し、観光事業は事実上中断しています。2019年には、金正恩委員長が金剛山を視察し、韓国側が建設した施設を撤去するよう指示しました。その後、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受け、撤去の動きは一時中断されましたが、施設は破壊され、事実上放棄された状態です。2020年には、韓国側が個別の観光であれば制裁に抵触しないとの見解を示しましたが、観光再開の見通しは立っていません。金剛山は、かつては南北交流の象徴でしたが、現在ではその役割を終え、今後の動向が注目されています。

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