金旋

金旋（きん せん、生年不詳 - 209年）は、後漢末期の人物で、字を元機（げんき）と称しました。司隸京兆尹（しれいけいちょういん）の出身で、前漢の金日磾（きんじつてい）の末裔とされています。子に金禕（きんい）がいます。

事跡

『三国志』によると、赤壁の戦いで曹操が敗れた後、209年に劉備が荊州南部に侵攻した際、武陵太守であった金旋は、劉度（りゅうど）、韓玄（かんげん）、趙範（ちょうはん）らとともに劉備に降伏しました。

一方、『三国志』の裴松之（はいしょうし）注が引用している『三輔決録注』（さんぽけつろくちゅう）の「金旋伝」では、金旋の字は元機、京兆尹の出身で、黄門侍郎（こうもんじろう）から漢陽太守（かんようたいしゅ）となり、その後、徴召されて議郎（ぎろう）を経て中郎将（ちゅうろうしょう）となり、武陵太守も兼任したとされています。この時、劉備に攻め込まれる点は『三国志』と同じですが、こちらでは金旋は死に追いやられたと記されています。また、金旋の子が金禕であることも明確に記されています。

『三輔決録注』の「金禕伝」で今日まで残っている部分には金旋への言及はありませんが、文中で金禕が金日磾の子孫とされていることから、金禕の父である金旋も同様であると考えられます。金禕は218年に曹操に対する反乱に失敗し、この時に彼を始めとする一族は皆殺しとなって滅亡しています。

なお、『三輔決録注』は趙岐（ちょうき）の『三輔決録』を西晋の摯虞（しご）が補完したものであり、趙岐は201年に死去しているため、『三輔決録』の原文に金旋や金禕の顛末までは書かれていなかったはずです。

三国志演義での金旋

小説『三国志演義』においても、金旋は武陵太守として登場します。劉備軍の張飛（ちょうひ）が攻めてきた際、配下である鞏志（きょうし）の諫言を退け戦いますが、敗北し武陵へ逃げ戻ります。しかし、その後、鞏志に裏切られ、矢で射殺されてしまいます。金禕も演義に登場しますが、金旋の子であるとは明言されていません。

配下

『三国志演義』でのみ登場する配下として、鞏志がいます。


金旋は、史実と演義で異なる描かれ方をされており、特に最期については大きく異なっている点が特徴的です。史実では劉備に降伏したとも、殺害されたともされていますが、演義では配下の裏切りによって命を落とすという悲劇的な結末を迎えています。また、金旋の子である金禕も、史実では反乱に失敗し一族皆殺しとなっていますが、演義では特筆されていません。これらの点は、小説と史実の解釈の違いを示す好例と言えるでしょう。

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