趙岐

後漢の重臣にして孟子研究の大家、趙岐の生涯

趙岐（ちょうき、生年不詳-201年）は、後漢末期を駆け抜けた政治家であり、学究でもありました。とりわけ『孟子』の注釈書は、後世に大きな影響を与え、現在でも高く評価されています。波乱に満ちた生涯を送った趙岐。その生涯と業績を紐解いていきましょう。

困難な生い立ちと政治への道

趙岐は京兆尹長陵県（現在の中国陝西省）の出身で、若い頃は趙嘉と名乗っていました。名家の出身であった彼は、馬融の親族と結婚するなど、恵まれた環境にありました。しかし30歳の頃からは7年にも及ぶ大病に見舞われ、苦難の時期を過ごしたようです。

その後、趙岐は一族と共に、権力者である唐衡とその兄弟を批判したことが原因で、激しい迫害を受けます。京兆尹に就任した唐玹から逃れるため、故郷を離れ、各地を放浪。数年間、孫嵩という人物にかくまわれながら身を潜めていました。

唐氏兄弟の失脚後、趙岐は京兆に戻り、並州刺史という要職に昇進します。しかし、党錮の禁という政治弾圧によって失脚。その後、黄巾の乱という大規模な反乱を機に、再び朝廷に仕えることになります。何進の推薦によって敦煌太守に任命されますが、赴任途中、賊に襲われ、九死に一生を得て長安に逃げ帰ります。

董卓が献帝を長安に遷都させると、趙岐は太僕という重要な役職に就きました。献帝が洛陽に帰還する事が決定すると、趙岐は荊州へと向かい、劉表に洛陽再建を依頼。そのまま荊州にとどまり、かつての恩人である孫嵩を青州刺史に推薦するなど、その人脈と影響力を遺憾なく発揮しました。その後、太常という役職に就いています。

『孟子』注釈と学問への貢献

趙岐の最も重要な業績は、なんといっても『孟子』の注釈である『孟子章句』でしょう。『十三経注疏』にも収録され、朱子の注釈に対比して「古注」と呼ばれ、儒学の発展に多大な貢献を果たしました。

また、三輔地域（長安周辺地域）の人物に関する伝記を集めた『三輔決録』も著しました。残念ながら現存していませんが、西晋の摯虞による注釈や、『後漢書』の引用などを通して、その内容の一部を知ることができます。

ロマン史劇『三国志演義』における趙岐

有名な歴史小説『三国志演義』にも、趙岐は登場します。董卓が袁紹と公孫瓚の仲介を試みた際に、使者として派遣された人物として描かれています。これは『後漢書』にも記載されている史実を元にしていると考えられます。

90歳を超える生涯と歴史的評価

建安6年（201年）、趙岐は90歳を超える生涯を閉じました。政治家、学者として、激動の時代を生き抜き、数々の功績を残した趙岐。その生涯は、後漢末期の混沌とした状況を理解する上で、貴重な資料となっています。彼の業績は現代においても高く評価され、後世に大きな影響を与え続けているのです。

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