金東淳

金東淳（キム・ドンスン）とは

金東淳（キム・ドンスン、1942年 - ）は、大韓民国に亡命した脱北者でありながら、北朝鮮の工作員であるとの疑惑を持たれた人物です。元工作員の元正花の継父であり、その事件をめぐり注目を集めました。

生い立ちと経歴

金東淳は、平壌美術大学彫刻科を卒業後、朝鮮人民軍人民武力部偵察局の少佐を務めました。その後、咸鏡北道管理処計画課長や清津市勤労者協会管理委員会委員長を歴任。1974年には朝鮮労働党に入党し、1976年には元正花の母と結婚しました。

1999年に中国に潜入し、2003年から2006年にかけて、元正花に北朝鮮の物資や工作資金を提供したとされています。2006年にはカンボジアを経由して脱北者を装い韓国へ亡命しました。しかし、2008年に北朝鮮の工作員である疑いで逮捕されました。

逮捕と裁判

2008年、金東淳は元正花とともに、韓国の合同捜査本部によって逮捕されました。自宅からは、朝鮮労働党の党員証、偽造パスポート、短波ラジオ、北朝鮮の要人に関する資料などが発見されました。これにより、間諜罪で起訴されました。

逮捕時、金東淳は元正花と共に工作活動を行っていたとされています。主な任務は、脱北者たちが北朝鮮国内の誰から情報を得ているのかを把握し、北朝鮮に報告することでした。彼は、「中国で貿易業をしていたため、北朝鮮の情報をよく知っている」と話し、様々な脱北者の集まりに接近し、情報提供者を特定しようとしていたとされています。

2009年、水原地検は懲役12年を求刑しましたが、水原地裁は直接的な証拠がないとして無罪判決を言い渡しました。

北朝鮮との関係

元正花の証言によると、金東淳は朝鮮労働党39号室傘下の朝鮮大聖総局の高級幹部であったとされています。また、金東淳の次女は国家安全保衛部の工作員、長男は同部で運転手を務めており、彼の姪婿は北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員会委員長の息子であるとも語られています。

韓国での生活

ソウル市内で一人暮らしをしていた金東淳は、近所の社会福祉館のコンピューター講座に参加するなど、一般市民と同じような生活を送っていました。脱北者らの証言によると、身長は172センチ程度でやせ気味、いつも整髪料で髪を整え、若々しく人当たりの良い印象を与えていたとされています。

結論

金東淳は、脱北者でありながら北朝鮮工作員との疑いをかけられ、逮捕、起訴、そして無罪判決という異例の経緯を辿った人物です。その背景には、複雑な北朝鮮の工作活動と、脱北者社会の闇が垣間見えます。彼の真実はいまだ謎に包まれており、今後の調査や新たな証拠の発見が待たれます。

参考文献

女スパイ：義父キム・ドンスンとは何者か(朝鮮日報 : 2008/08/29)
女スパイ：工作員一家の恐るべき全貌（上）(朝鮮日報 : 2008/08/29)
* 女スパイ：元被告「韓国の法に感謝し、反省する」（下）(朝鮮日報 : 2008/10/02)

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