金森頼旹

金森頼旹：転封の生涯と文化への造詣

金森頼旹は、江戸時代前期を代表する大名の一人です。飛騨高山藩、出羽上山藩、そして美濃郡上藩と、生涯を通じて複数の藩を治めた彼の波瀾万丈な人生は、当時の政治情勢や藩政運営のあり方を深く反映しています。

頼旹は、飛騨高山藩第5代藩主・金森頼業の長男として誕生しました。しかし、幼くして父を亡くし、わずか4歳で家督を相続することになります。幼少期は叔父の金森近供が後見を務めました。青年期には酒好きで素行に問題があったという記録も残っており、藩士田島藤五郎の切腹によって諌められたという逸話も伝わっています。

元禄2年（1689年）、21歳の若さで幕府の奥詰衆に任命され、その後側用人にも昇進しました。しかし、翌年には突如解任されています。この解任劇の理由は諸説あり、5代将軍徳川綱吉の不興を買った、品行の悪さが原因だった、あるいは柳沢吉保の策略によるものだったなど、様々な憶測が飛び交っています。当時の幕府内では、若くして抜擢されたものの、短期間で失脚する例が少なくなかったことを考えると、頼旹の経験も決して特異なものではなかったと言えるでしょう。

元禄5年（1692年）7月、頼旹は出羽上山へ転封となりました。この転封の背景には、幕府が飛騨地方の森林や鉱山を直轄支配下に置こうとした意図があったと推測されています。上山藩の石高は高山時代とほぼ同じ3万8000石余でしたが、鉱山や林業による副収入がなくなったこと、加えて不作が続いたことから、藩の財政は急速に悪化しました。さらに、上山城は金森氏入封以前に幕府直轄地であったため、既に破却されており、頼旹は二の丸に館を設けて藩庁としたのです。

元禄10年（1697年）、頼旹は再び転封を命じられ、美濃郡上へと移ります。郡上藩では3万8900石を領し、その領地は郡上周辺と越前国大野郡内にまたがっていました。元禄12年（1699年）には、領民からの訴えを受け、前藩主遠藤氏時代から行われていた年貢の取立て方法を、検見法から定免法へと変更するなど、治世にも気を配っています。郡上時代も財政難に苦しむことはありましたが、全体的には安定した治世を送ったと言えるでしょう。

元文元年（1736年）、頼旹は68歳で亡くなりました。嫡男の可寛を既に亡くしていたため、孫の頼錦が家督を相続することとなりました。

金森頼旹は、政治家としての顔だけでなく、能書家としても知られており、和歌や茶道も嗜んだ教養人でもありました。転封という激動の時代を生き抜きながらも、文化への造詣を深めた彼の生涯は、現代においても学ぶべき点が多く残されています。彼の経験は、単なる個人の物語にとどまらず、江戸時代の大名家や藩政のあり方を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。

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