金淑姫

金淑姫（キム・スクヒ）について



金淑姫（キム・スクヒ、1963年生まれ）は、北朝鮮の工作員であり、その生涯は多くの謎に包まれています。「スクヒ」は実際の発音では「スッキ」に近いとされています。

金賢姫との関係



彼女は、大韓航空機爆破事件の実行犯として知られる金賢姫（キム・ヒョンヒ）と、工作員養成機関である金星政治軍事大学（後の金正日政治軍事大学）で同期でした。年齢は金賢姫より1歳年下です。二人は共に訓練を受け、長期間にわたり生活を共にしました。金賢姫によると、金淑姫は平安南道順川市出身で、父親は将校、母親は食料品店の販売員でした。淑姫は平壌軽工業大学で学んでいましたが、17歳の時に工作員として召喚されました。

金淑姫は、色白で目の大きな美人であり、身長は約160センチメートルでした。性格は穏やかで芯がしっかりしており、勉強熱心でプライドが高い一方、心の広い女性だったとされています。金賢姫とは非常に相性が良く、姉妹のように親密な関係を築いていました。

工作員としての訓練



1980年3月、金賢姫と共に工作員教育を受けることになり、二人は「配合」され、平壌直轄市龍城区域東北里の招待所で同居生活を始めました。その後、招待所を転々としながら、過酷な訓練を受けました。訓練内容は、政治思想学習、射撃、行軍、水泳など多岐にわたりました。また、毎日、一般男性2名を制圧する力を身につけるための訓練や、実弾射撃訓練、武器の分解・組立・修理なども行われました。特に、山岳行軍は毎日10キロの重りを背負い4キロを歩くという過酷なものでした。

金星政治軍事大学では、映画鑑賞も訓練の一環として組み込まれており、スパイ映画を視聴後、互いに討議することが義務付けられていました。映画『死に向かう5人』を観た際、金淑姫が「私たちもあんなことしなければならないの？」と涙ながらに語ったというエピソードが残っています。

1年間の工作員養成期間を終えた後、金淑姫と金賢姫は日本語教育を受けました。また、韓国の新聞を読むなど、朝鮮半島の情勢を把握する訓練も行われました。

横田めぐみとの関わり



金淑姫は、1977年に新潟から拉致された横田めぐみから日本語を教わっていたことが、金賢姫の証言により明らかになっています。1984年末頃まで、金淑姫、田口八重子、横田めぐみの3人は、中和郡忠龍里の招待所で同居していました。金淑姫は、同居していた招待所は電気事情が悪く、寒かったと金賢姫に話していたそうです。横田めぐみは、金淑姫に日本語を教える役割を担っており、二人の間には特別な関係があったことが伺えます。また、金賢姫は横田めぐみについて「おとなしく、憂鬱気味で、よく病気になり入院していた」と語っています。また、指導員が「おとなしい淑姫が、おとなしい日本人の子ども（横田めぐみのこと）と暮らしていたので、いっそうおとなしくなってしまった。工作員は活発でなくてはならないのに…。淑姫を李恩恵と組み合わせるんだった。失敗した」と話していたことも記憶しています。

その後の足跡



金淑姫と金賢姫は、1984年から1987年の間に中国語や広東語の実習を受けました。マカオでは浸透工作を命じられ、生活費を節約しながら自炊生活を送りました。1987年、二人は再びマカオへ派遣される予定でしたが、途中で金賢姫だけが平壌に戻るよう命令され、その後、大韓航空機爆破事件に関与することになります。金淑姫とは広州で別れる際、何も言えず、お互いの手を握り合い、形見として指輪とイヤリングを交換し合ったといいます。それ以降、金淑姫の足跡は不明となっています。

金淑姫に関する考察



金淑姫は、北朝鮮の工作員として厳しい訓練を受け、多くの時間を金賢姫と共に過ごしました。彼女が拉致被害者である横田めぐみから日本語を教わっていた事実は、北朝鮮の拉致問題の複雑さを物語っています。金淑姫の生涯は、北朝鮮の工作員たちの厳しい現実と、拉致問題の悲劇を象徴していると言えるでしょう。

参考文献



関連文献



関連項目


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