金瀬俊雄

金瀬俊雄（かねせ としお、1919年（大正8年）2月19日 - 1980年（昭和55年）2月22日）は、昭和期の日本の政治家、労働運動家です。千葉県に生まれ、衆議院議員を1期務めました。

千葉県君津郡佐貫町（現在の富津市）で育ち、千葉県立木更津中学校（現在の千葉県立木更津高等学校）を経て、千葉師範学校を卒業しました。学校卒業後、教師の道へ進み、君津郡内の小学校や青年学校で教鞭をとりました。第二次世界大戦後、千葉県教職員組合の結成に深く関わることで労働運動の世界に入り、同時に日本社会党へ入党しました。

1947年、千葉県議会議員選挙に君津郡選挙区から立候補し、初当選を果たしました。以来、7期にわたり県議会議員として活動しました。県議在任中には、社会党を一時的に離れて民主社会党に加わったこともありましたが、すぐに社会党に復党しています。長年にわたり公共の福祉に尽力し、地方自治の発展に貢献した功績が認められ、1968年には藍綬褒章を受章しました。県議時代は、特に京葉工業地域の開発に力を注ぎ、歴代の千葉県知事とも強固な協力関係を築いたとされます。地元では、非常に面倒見の良い人柄として知られていました。また、社会党千葉県本部の財務を取り仕切り、党内の左右対立や協会派・反協会派間の激しい内部抗争が起きた際にも、中立的な立場を保ちつつ、結果として党組織を維持するなど、その手腕は「豪腕」と評されました。

1972年に行われた第33回衆議院議員総選挙では、社会党公認候補として千葉3区から出馬し、初当選を果たし、衆議院議員となりました。国会では、当時大きな社会問題となっていた新東京国際空港（現・成田国際空港）問題などを積極的に取り上げました。1973年には、新空港の建設中止を強く主張しています。その主張の根拠として、当時の総需要抑制策（便数削減、海外渡航制限、インフレ下での運賃値上げ、航空3社への航空機新規購入半減指示など）によって、羽田空港の過密問題が解消される見込みである点を挙げていました。

しかし、衆議院議員任期中の1974年、千葉県君津市で実施されたダム建設入札を巡る不祥事が明るみに出ました。入札の結果、最終候補に残った飛島建設に対し、「東京電力に顔が利く」などと述べて政治献金を要求したとされます。飛島建設がこれに応じなかったため、同社のスキャンダルを国会で追及すると脅迫し、結果として300万円を受け取ったとされています。この事件が発覚し、1976年には恐喝容疑で逮捕、起訴されました。さらに同年、チッソ石油化学五井工場が1973年と1974年に起こした大事故に関連し、国会での質問を見送る見返りとして300万円を脅し取った疑いでも追送検されています。取り調べに対し、1972年の選挙で多額の費用がかかったことなどを動機として供述したと報じられています。これらの事件により、金瀬は衆議院議員を失職しました。

1980年2月22日、61歳でこの世を去りました。その郷土への貢献などを称え、没後間もない1982年2月には、木更津市役所に隣接する君津教育会館に金瀬の銅像が建立されました。銅像に添えられた碑文には、加瀬完の名で、金瀬が郷土に尽くしたが、政争の具として公職を辞するに至った経緯が記されていると伝えられています。

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