金為時

金為時：奥州の豪族、前九年の役における活躍と謎めいた出自

金為時は、平安時代後期（1017年頃～1088年頃）に陸奥国で活躍した豪族です。外従五位下・気仙郡司という官職に就いていました。彼の出自については、大きく分けて2つの説があります。1つは、阿倍氏流金氏という説で、左大臣・阿倍倉梯麻呂の子孫が、貞観年間に気仙郡司として赴任し、献上した金によって金姓を賜ったというものです。もう1つの説は、新羅王族の末裔という説で、天平時代に金姓を賜った金徳師の子孫であるというものです。昆、紺、今、近、金野、昆野、紺野、今野、近野といった苗字は、金氏の支流もしくは亜流と考えられています。

金為時の兄弟には、金為行という人物がいます。『十訓抄』には、金為行が安倍貞任の舅であったことが記されています。このことから、金氏は安倍氏と何らかの関係を持っていたと考えられます。

前九年の役において、金為時は源頼義に従って安倍氏と戦いました。しかし、彼の家系と安倍氏との間には複雑な関係があったことが、いくつかの史料から示唆されます。金為時自身は源氏側に属していましたが、彼の兄弟である為行、師道、依方らは安倍氏側に属していたという記録が残っています。これは、陸奥の在庁官人たちが、藤原経清や平永衡のように、安倍氏と婚姻関係などを結び、一族として行動していたことを示唆しています。

天喜4年（1056年）、平永衡が謀反の嫌疑で殺害され、藤原経清も安倍氏側に寝返りましたが、金為時は源氏軍に属し、厳冬の前線を死守する「しんがり」を務めました。戦闘が膠着する中、天喜5年（1057年）9月、金為時は下毛野興重と共に、源頼義に奥六郡背後の攪乱作戦を提案します。それは、釶屋、仁土呂志、宇曽利（現在の青森県東部から岩手県北部にかけての地域と考えられる）の夷人の首長である安倍富忠を調略するというものでした。この作戦は見事に成功し、安倍富忠は源氏側に寝返ります。しかし、安倍頼時は富忠を説得しようとしましたが、逆に伏兵に襲われて戦死してしまいました。

その後も安倍氏は安倍貞任を中心に抵抗を続けましたが、戦況は清原氏の援軍を待つこととなりました。康平6年（1063年）2月25日の除目には金為時の名前が見られません。これは、前九年の役後の状況を反映していると考えられます。

金為時の生涯は、奥州という辺境の地で、豪族として、そして前九年の役という大きな動乱の中で生きた、複雑で謎多き人物像を示しています。彼の出自、安倍氏との関係、そして前九年の役における役割など、多くの謎が残されていますが、これらの謎を解き明かすことで、平安時代後期の奥州の歴史をより深く理解することができるでしょう。彼の存在は、単なる地方豪族の枠を超えて、当時の政治、軍事、社会構造を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。

金為時に関する史料は多くありませんが、『陸奥話記』などの史料から、彼の行動や役割を推測することができます。『古代氏族系譜集成』などの文献も、彼の出自や家系を理解する上で役立ちます。また、金為時が登場するテレビドラマ『炎立つ』なども、彼の生涯を知る上で参考になるでしょう。彼の生涯を通して、当時の奥州の政治状況や社会構造をより深く知ることができるでしょう。

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