鉄の化合物の一覧

鉄の化合物一覧

鉄は、地殻中に豊富に存在する遷移金属元素であり、様々な化合物を作ります。鉄の化合物は、その酸化状態（鉄のイオン価数）によって性質が大きく異なります。代表的な酸化状態は+2（鉄(II)イオン）と+3（鉄(III)イオン）であり、それぞれ異なる化合物群を形成します。

二元化合物

二元化合物は、鉄ともう一つの元素からなる化合物です。以下に、代表的な二元化合物を示します。

ハロゲン化物: 臭化鉄(II) (FeBr2)、臭化鉄(III) (FeBr3)、塩化鉄(II) (FeCl2)、塩化鉄(III) (FeCl3)、フッ化鉄(II) (FeF2)、フッ化鉄(III) (FeF3)、ヨウ化鉄(II) (FeI2)、ヨウ化鉄(III) (FeI3)
水素化物: 水素化鉄(II) (FeH2)、水素化鉄(III) (FeH3)
窒化物: 窒化鉄(III) (FeN)、一窒化三鉄 (Fe3N)、窒化鉄(II) (Fe3N2)、アジ化鉄(II) (Fe(N3)2)
酸化物: 酸化鉄(II) (FeO)、酸化鉄(III) (Fe2O3)、四酸化三鉄 (Fe3O4) (FeO・Fe2O3)
硫化物: 硫化鉄(II) (FeS)、二硫化鉄(II) (FeS2)（黄鉄鉱、白鉄鉱）、硫化鉄(III) (Fe2S3)、四硫化三鉄 (Fe3S4)
セレン化物: セレン化鉄(II) (FeSe)、セレン化鉄(III) (Fe2Se3)
ケイ化物: 二ケイ化鉄 (FeSi2)
炭化物: 一炭化三鉄 (Fe3C) (セメンタイト)

これらの化合物は、鉄の酸化状態、結晶構造、その他の元素との結合様式によって、それぞれ異なる物理的および化学的性質を示します。例えば、酸化鉄(II)は黒色で、酸化鉄(III)は赤褐色です。硫化鉄(II)は磁性を持ちます。

三元化合物

三元化合物は、鉄と2種類の他の元素からなる化合物です。以下に、代表的な三元化合物を示します。

錯体: フェロセン (Fe(C5H5)2)
酸塩: 塩素酸鉄(III) (Fe(ClO3)3)、過塩素酸鉄(II) (Fe(ClO4)2)、過塩素酸鉄(III) (Fe(ClO4)3)、シアン化鉄(II) (Fe(CN)2)、シアン化鉄(III) (Fe(CN)3)、炭酸鉄(II) (FeCO3)、炭酸鉄(III) (Fe2(CO3)3)、シュウ酸鉄(II) (FeC2O4)、シュウ酸鉄(III) (Fe2(C2O4)3)、クロム酸鉄(III) (Fe2(CrO4)3)、二クロム酸鉄(III) (Fe2(Cr2O7)3)、オルト過ヨウ素酸鉄(II) (Fe5(IO6)2)、マンガン酸鉄(II) (FeMnO4)、モリブデン酸鉄(II) (FeMoO4)、硝酸鉄(II) (Fe(NO3)2)、硝酸鉄(III) (Fe(NO3)3)、水酸化鉄(II) (Fe(OH)2)、水酸化鉄(III) (Fe(OH)3)、水酸化酸化鉄(III) (FeO(OH))、リン酸鉄(III) (FePO4)、リン酸鉄(II) (Fe3(PO4)2)、セレン酸鉄(II) (FeSeO4)、亜硫酸鉄(II) (FeSO3)、硫酸鉄(II) (FeSO4)、硫酸鉄(III) (Fe2(SO4)3)、ヨウ素酸鉄(II) (Fe(IO3)2)、ヨウ素酸鉄(III) (Fe(IO3)3)、タングステン酸鉄(II) (FeWO4)
カルボニル: ペンタカルボニル鉄 (Fe(CO)5)、ノナカルボニル二鉄 (Fe2(CO)9)、ドデカカルボニル三鉄 (Fe3(CN)12)

これらの化合物は、鉄イオンと様々なアニオンとの組み合わせによって生じます。その性質は、アニオンの種類や鉄の酸化状態によって大きく異なります。

四元・五元化合物

四元・五元化合物とは、鉄と3種類以上の元素からなる化合物です。

錯体: テトラフルオロホウ酸フェロセニウム ([Fe(C5H5)2]BF4)
有機酸塩: 酢酸鉄(II) (Fe(CH3COO)2)、酢酸鉄(III) (Fe(CH3COO)3)、ギ酸鉄(II) (Fe(HCOO)2)、シアン酸鉄(II) (Fe(OCN)2)、チオシアン酸鉄(II) (Fe(SCN)2)、チオシアン酸鉄(III) (Fe(SCN)3)
錯塩: ヘキサシアニド鉄(III)酸 (H3[Fe(CN)6])、ヘキサシアニド鉄(II)酸 (H4[Fe(CN)6])、硫酸アンモニウム鉄(II) ((NH4)2Fe(SO4)2)
* 鉄酸塩: 鉄酸 (H2FeO4)、鉄酸バリウム (BaFeO4)、鉄酸カリウム (K2FeO4)

これらの化合物は、より複雑な構造を持ち、多様な用途があります。

まとめ

鉄は、多様な化合物を作る能力があり、その性質は酸化状態や配位子によって大きく異なります。本記事で紹介した以外にも、多くの鉄化合物が存在し、科学技術の様々な分野で利用されています。

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