鉄道電話

鉄道電話とは

鉄道電話とは、鉄道事業者が社内で使用する内線電話のことです。主な目的は、列車運行の保安に関する情報の伝達であり、公衆交換電話網の障害に左右されない独自の通信網として整備されています。

日本における鉄道電話の歴史

日本で最初の鉄道電話は、1880年に神戸駅と三ノ宮駅の間で開通しました。当時は、電信線を利用して通信を行っていました。鉄道電話が整備される以前は、国鉄では業務連絡に電報が使われており、モールス信号の専門知識を持つ通信士が必要でした。

その後、運転指令所と各停車場間に指令電話が整備され、手動電話交換機が導入されました。これにより、現業機関同士の連絡は容易になりましたが、回線容量の不足から通話までに時間がかかることもありました。そのため、短波回線も使用されていました。

1954年には、マイクロ波回線の増備が決定され、通信網の改善が進められました。1961年には、国鉄が電電公社に先駆けて、全国マイクロ波網による即時通話を完成させました。これにより、座席予約システムや文書伝達システム、貨物運用システムなどの運用が開始されました。

指令電話としての役割は、1962年の三河島事故や1963年の鶴見事故を受けて導入された列車防護無線に取って代わられました。また、駅業務に関しても、自動閉塞化や集中制御化が進み、鉄道電話は非常時や災害時などの緊急連絡用としての役割に重点が置かれるようになりました。

1984年からは、鉄道敷設に付随して光ファイバーの敷設が始まりました。これにより、固定電話サービスや携帯電話回線、インターネット回線などのバックボーンとして活用されるようになりました。近年では、駅のインターホンや監視カメラ、自動改札機などと統合した省力化システムにも利用されています。

民営鉄道における鉄道電話

民営鉄道（私鉄・第三セクター鉄道）の鉄道電話は、基本的に社内および鉄道系の子会社のみで利用されます。外部の者が利用することはできません。一部の会社では、鉄道車両製造メーカーが自社の工場と沿線の鉄道会社間で使用する例もあります。

指令電話としての役割は、JRと同様に列車防護無線とATSの導入により限定的になっています。ただし、京浜急行電鉄のように、集中司令室を設け、列車防護無線と駅からの電話情報をもとに人力で操作している場合もあります。

放送設備との融合

一部の鉄道会社では、鉄道電話と放送設備を融合させたシステムを導入しています。これにより、遠隔地から駅のホームやコンコースの放送を行うことができます。特に、ダイヤが乱れた際に無人駅への案内放送を行う際に活用されています。放送の終わりにはプッシュホンの音が鳴るため、鉄道電話からの放送であることが判別できます。

JR電話サービス（JRほっとライン）

国鉄分割民営化後、JRグループの鉄道電話業務はJR通信が行っていました。JR通信は日本テレコムとの合併などを経て、現在はソフトバンクが基幹通信網の業務を行っています。

現在のJR電話サービスは、ソフトバンクがJRグループおよび関連企業向けに提供する定額制電話サービスであり、「JRほっとライン」とも呼ばれています。ソフトバンクの電話交換機に専用線を接続することで、JRグループ以外の企業でも利用できますが、申し込みができるのは、JRグループ関連会社や鉄道関連の事業者に限られています。例として、鉄道工事・保守事業者、鉄道車両製造メーカー、旅行代理店などが挙げられます。

JR電話の番号は7桁で、先頭の3桁は地域を表します。市販の電話機が使用でき、FAXも利用できます。電話番号は「0XY-ZZZZ」のように表され、同一局番号内であれば局番なしで通話できます。市外局番とは連動しておらず、03地域でも東京、新宿、田端など別の局番号が割り当てられています。

特殊なJR電話として、VHF帯を使用した自動車電話があり、手動交換により全国のJR電話と通話することができました。新幹線では、UHF空間波を使用していたが、LCX化以降はダイヤル即時通話が可能となっています。

駅間ごとに割り振られた沿線電話は、保線作業や非常時に利用されます。

JRグループ内では、IPセントレックスを導入して契約数を減らす動きもあります。また、携帯電話からJRほっとラインにかけられる「JR携帯電話サービス」も提供されています。

インドにおける鉄道電話

インド国鉄は政府機関ですが、鉄道電話サービスも運営しています。インドでは、鉄道事業が様々なサービスを包括的に展開していることが特徴です。

まとめ

鉄道電話は、鉄道運行の安全を支える重要な通信システムです。その歴史は古く、技術も発展を続けています。現在では、鉄道事業だけでなく、関連企業や周辺地域にも利用されており、社会インフラとして重要な役割を果たしています。

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