杉谷善住坊

杉谷善住坊：信長暗殺を試みた謎多き鉄砲の名手

杉谷善住坊（すぎたに ぜんじゅうぼう）は、生年不詳ながら、天正元年（1573年）に没したとされる安土桃山時代の人物です。彼は、織田信長を火縄銃で狙撃したことで歴史に名を残していますが、その生涯は多くの謎に包まれています。

生涯

鉄砲の名手であったこと以外、善住坊の確かな人物像はほとんど分かっていません。出身についても、甲賀五十三家の一つである杉谷氏の忍者であった、伊勢国菰野の杉谷城主であった、あるいは雑賀衆、根来衆、賞金稼ぎ、猟師など、様々な説があります。

信長を狙撃した動機についても、近江国を追われた六角氏からの依頼、信長への個人的な恨み、鉄砲の名人としての腕試しなど、複数の説が唱えられています。いずれにしても、善住坊は信長に対して強い敵意を抱いていたことは確かでしょう。

元亀元年（1570年）5月19日、善住坊は近江国の千草越え（千種街道）を通過していた信長を狙撃しました。12～13間（約20数メートル）の距離から2発の銃弾を放ったとされますが、信長はかすり傷を負っただけで済みました。狙撃は失敗に終わったものの、信長に大きな衝撃を与えたことは間違いありません。

狙撃後、善住坊は逃亡生活を送りますが、信長は徹底的な犯人探しを命じました。その結果、善住坊は近江国高島郡堀川村の阿弥陀寺に潜伏しているところを、領主・磯野員昌に捕らえられました。

織田家に引き渡された善住坊は、菅屋長頼と祝重正による尋問を受けた後、鋸挽きの刑に処されました。これは、生きたまま首から下を土中に埋め、竹製のノコギリで時間をかけて首を切断するという、非常に残虐な刑です。『フロイス日本史』にも、名前は不明ながら、ある仏僧が同じような方法で処刑されたという記述があります。

この仏僧は、書状で信長に敵対するよう城を煽動しようとしていたとされ、善住坊の行為と通じるものがあると考えられています。

関連作品

杉谷善住坊は、その特異な生涯から、様々な小説やドラマ、漫画などのフィクション作品に登場しています。

NHK大河ドラマ『黄金の日日』：川谷拓三が善住坊を演じました。
小説『信長を撃（はじ）いた男』：南原幹雄によって、善住坊の生涯が描かれています。
小説『修道士の首』：井沢元彦による歴史ミステリー作品。
漫画『千草峠の風』：久慈光久の作品で、善住坊が描かれています。
漫画『戦国スナイパー』：柳内たくみによる作品。
小説『白狐魔記 戦国の雲』：斉藤洋による作品で、善住坊の弟子が信長に復讐する物語です。
漫画『信長の忍び』：重野なおきによる作品で、アニメ版では竹本英史が善住坊の声を担当しています。この作品では、善住坊の出自を甲賀忍者として描いています。
NHKドラマ『信長のスマホ』：スギちゃんが善住坊を演じました。
ゲーム『Fate/Grand Order|Fate_Grand Order』：後藤邑子が善住坊の声を担当しています。

これらの作品を通して、善住坊は様々な側面から描かれ、人々に語り継がれています。

関連項目

狙撃：善住坊が行った信長狙撃事件は、日本史における初期の狙撃事件として知られています。
萬松寺：善住坊が信長を狙撃した際、弾が萬松寺の和尚から貰った干し餅に当たったため助かったという伝説があります。
ゴルゴ13：漫画『ゴルゴ13』には、善住坊の子孫が親の仇を討つためにゴルゴ13に狙撃を依頼する話があります。

外部リンク

* 善住坊 （コトバンク）

杉谷善住坊は、その短い生涯の中で、歴史に大きな爪痕を残しました。彼の謎に満ちた人物像は、今もなお多くの人々の興味を惹きつけ、様々な形で語り継がれています。

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