錦織寺

錦織寺：歴史と文化が息づく真宗木辺派本山

滋賀県野洲市木部にある錦織寺は、真宗木辺派の本山寺院です。遍照山を山号とし、本尊は阿弥陀如来。平安時代初期の天安2年（858年）、天台宗の慈覚大師円仁によって創建されました。当初は天台宗の寺院でしたが、浄土真宗の開祖である親鸞との関わりから、浄土真宗の重要な寺院へと発展していきます。

親鸞との深い縁

嘉禎元年（1235年）、親鸞が関東から京都に戻る途中、錦織寺を訪れました。この地で親鸞は、常陸国で感得した阿弥陀如来坐像を安置し、『教行信証』の最終二巻を完成させたと伝えられています。また、親鸞の肖像画である「満足の御影」もこの地で描かれたとされ、錦織寺は親鸞聖人の足跡を今に伝える貴重な寺院となっています。

寺号の由来と歴史的変遷

暦仁元年（1238年）、天女が紫香の錦を織って仏前に供えたという伝説があり、このことから「錦織寺」という寺号が与えられました。その後、鎌倉時代には横曽根門徒の拠点となり、室町時代には本願寺派との関わりも見られます。戦国時代には浄土真宗と浄土宗の兼学寺院となり、門跡寺院に列せられるなど、歴史の波を受けながらも独自の道を歩んできました。

元禄7年（1694年）の大火で多くの建物が焼失しましたが、その後再建され、享保11年（1726年）には浄土真宗に復帰。享保19年（1734年）には東山院の御所・御盃之間を拝領し、延享2年（1745年）には真宗錦織寺派を、明治9年頃には真宗木辺派を設立しました。

貴重な文化財と境内

錦織寺には、多くの文化財が残されています。阿弥陀堂には、親鸞が霞ヶ浦で得たという阿弥陀如来坐像が安置されています。御影堂は、親鸞の肖像画「満足の御影」を祀る重要な建物で、滋賀県指定有形文化財に指定されています。また、天安堂には、最澄が比叡山を開く際に用いた霊木で作られたと伝わる毘沙門天王像が安置されています。

境内には、これらの建物以外にも、鐘楼、親鸞聖人御廟、東山御殿など、歴史を感じさせる建造物が数多く残されています。広大な境内には、庭園や池なども整備され、静寂な空間が広がっています。表門もまた、滋賀県指定有形文化財に指定されており、江戸時代の建築様式をよくとどめています。

アクセスと情報

錦織寺は、JR琵琶湖線野洲駅から野洲市コミュニティバスでアクセスできます。歴史と文化に触れ、静寂な時を過ごしたい方におすすめの寺院です。公式ホームページや参考文献も合わせてご参照ください。

参考文献

森岡浩『日本名門・名家大辞典』東京堂出版、2012年。

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