鍋倉城 (陸奥国)

鍋倉城（遠野城）

鍋倉城は、岩手県遠野市に所在する日本の城郭です。別名、遠野城とも呼ばれています。城跡は国の史跡として指定され、遠野市の「遠野遺産」にも認定されています。

概要

鍋倉城は、鍋倉山に本丸を築き、猿ヶ石川と早瀬川を外堀、来内川を内堀として利用した自然の地形を生かした構造となっています。寛永4年（1627年）に八戸直義が横田城を改修し、鍋倉城と改名しました。城の最高所に本丸を配置し、その南に二の丸、東に三の丸を設けています。

構造

標高約340mの鍋倉山、物見山の麓に位置する独立丘陵に築かれています。城の中心部には本丸（120m×24m）があり、空堀を挟んで南側に二の丸（88m×45m）、本丸の北東には三の丸（135m×29m）が配置されています。当初、本丸の屋根は萱葺きでしたが、1648年から1651年（慶安年間）の火災後に柾葺きに改められました。本丸の西側には土塁が築かれ、本丸と二の丸には礎石が残っています。堀跡は、本丸と二の丸の間、本丸の西方、二の丸の西方（行燈堀）などで確認できます。

歴史・沿革

鎌倉時代初期から阿曽沼氏の本拠地であった横田城は、洪水の被害を受けやすい場所でした。そのため、天正年間（1573年-1593年）の初め頃、阿曽沼広郷が横田村（現在の松崎町）の横田城から鍋倉山に新城を築き移転しました。その際、旧居城の名前を継承し横田城と称しました。一日市町と多賀里にあった六日町を移転させ、城下の町屋の中心としたと伝えられています。

天正18年（1590年）、阿曽沼氏は小田原参陣を拒否したため領主権を没収され、南部氏の配下となりました。天正20年（1592年）の「諸城破却令」には「横田 破 信直抱 代官 九戸 左馬助」と記されていますが、慶長5年（1600年）の阿曽沼氏一族の内紛によって、遠野は南部氏の領地となり、破却を免れました。

阿曽沼氏の旧領は分割され、横田城代として内陸部を上野氏と平清水氏が知行し、海岸地帯を大槌氏、田瀬を江刺氏が領しました。城代であった平清水氏は元和元年（1615年）に処刑され、その後、上野氏が元和7年（1621年）に病死すると、遠野奉行の毛馬内三左衛門が横田城代として赴任しましたが、治安の乱れが続きました。そのため、南部利直は寛永4年（1627年）、治安維持と仙台領との境目警護を理由に、八戸直義を八戸根城から横田城へ陸奥国代として入部させました。八戸直義は領内で独自の裁量権を認められ、横田城を修復して鍋倉城と改め、この城を領内統治の拠点としました。

城下町は横田村地内に形成され、通称「遠野城下」と呼ばれました。一国一城令以降は城ではなく館の呼称が正式となり、文化元年（1804年）の『郷村古実見聞記』では「要害屋敷 閉伊郡横田村 遠野」と記されていました。

明治2年（1872年）に廃城となり、現在は鍋倉公園として整備されています。

参考資料

児玉幸多、坪井清足『日本城郭大系 第2巻 青森・岩手・秋田』新人物往来社、1980年7月15日。
「角川日本地名大辞典」編纂委員会『角川日本地名大辞典 3 岩手県』角川書店、1985年3月8日。ISBN 4040010302。
遠野市 2010『遠野遺産公式ガイドブック』p.11

関連項目

遠野城下町資料館
日本の城一覧
横田城 - 同名の城郭
* 鍋倉城 - 同名の城郭

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