鎌倉千秋

鎌倉 千秋：多言語を操る国際派アナウンサー

1978年11月30日生まれの鎌倉千秋氏は、NHKのチーフアナウンサーとして、主に国際的な視点を持つ番組や報道の現場で活躍しています。日本語に加え、中国語と英語に堪能で、世界26カ国・地域での現地取材経験を持つ、まさに「国際派」の顔として知られています。

生い立ちと語学への関心

日本人の父と台湾出身の母の間に生まれた鎌倉氏は、静岡県焼津市で育ちました。幼少期から多言語環境にあったわけではなく、いわゆる帰国子女でもありません。しかし、育った環境の中で言葉に対する強い関心を持つようになったといいます。静岡雙葉高等学校を経て慶應義塾大学総合政策学部へ進学。大学時代には、多言語社会や多言語教育を研究するゼミで学び、言葉への理解を深めました。ここで第二外国語として中国語を選択したことが、その後のキャリアを決定づける一歩となります。大学で本格的に中国語学習を開始し、語学力を磨いていきました。大学卒業後、2023年には台湾大学国家発展研究所で修士号を取得し、現在はさらなる語学研鑽のため中国へ留学するなど、その学習意欲は尽きることがありません。

NHK入局からキャリア形成

2001年にNHKに入局した鎌倉氏は、最初の勤務地である沖縄放送局でキャリアをスタートさせました。2004年には東京アナウンス室へ異動し、『NHKニュース10』のリポーターとして全国放送に登場します。その後、『地球アゴラ』や『あなたの街で夢コンサート』といった様々なジャンルの番組を担当。特に『探検ロマン世界遺産』では、兵馬俑や殷墟など、中華人民共和国の数々の世界遺産を現地から精力的にレポートし、その国際感覚と取材力が注目されるようになります。

国際舞台での活躍と語学力

鎌倉氏の強みである語学力は、多くの国際的な場面で発揮されました。2007年の「日中文化体育交流年」では、北京の人民大会堂で行われたグランドフィナーレ・コンサートで、中国中央電視台のアナウンサーと共に共同司会を務めました。2009年には中国伝媒大学への留学を経験し、語学力と中国社会への理解をさらに深めます。この時期には、四川大地震からの復興状況を現地からレポートしたほか、中国総局付となり、現地での放送研修を受けました。研修中には上海国際チャンネルの番組にゲスト出演するなど、日中のメディアを股にかけた活動を展開。2010年の上海万博ではNHKの開幕特別番組で司会を務め、帰国後も中国中央電視台の春節番組に生出演するなど、日本人アナウンサーとしては異例とも言える活躍を見せました。

国際情勢の報道でも中心的な役割を担い、2011年からは国際報道番組『ワールドWaveトゥナイト』（現在の『国際報道2020』の前身）のメインキャスターを3年間務めました。中国共産党大会の中継特集や、中華民国の李登輝元総統への単独インタビュー、東ティモールのシャナナ・グスマン初代大統領へのインタビューなど、アジアを中心とした重要な政治・社会情勢を深く掘り下げて伝えました。

主要番組の顔として

国際報道の分野だけでなく、NHKの主要な報道番組でもキャスターを務めました。2014年からは深夜のニュース番組『NEWS WEB』のキャスターに就任。そして2016年からは、長寿番組『クローズアップ現代』の後継として始まった『クローズアップ現代＋』のキャスターとして、現代社会が抱える様々な課題を深く掘り下げ、視聴者に伝えました。

幅広い活躍と現在

報道番組以外にも、鎌倉氏は文化・芸術分野の番組にも数多く出演しています。例えば、『ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート』や『ザルツブルク音楽祭』の司会を務めるなど、クラシック音楽にも造詣が深い一面を見せています。また、『NHKスペシャル 未解決事件 追跡プロジェクト』や科学解説番組、エンターテインメント番組など、その活躍の場は多岐にわたります。

語学力は天賦の才だけでなく、後天的な努力の賜物であることを自ら語っており、大学での専門的な研究や複数回の留学はその証と言えるでしょう。テレビ朝日アスクの第一期卒業生であり、同時期に学んだ仲間たちの中には、後に著名なアナウンサーとなった人物もいます。

現在は再び語学研鑽のため活動を休止していますが、これまでの国際的な経験と多言語能力を活かし、今後のさらなる活躍が期待されています。

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